タイトル

ぴょんたの危機

いつの間にか季節は進んで12月、もうすぐ3回目のツインタイム。
碧も悟もちょっと考え中・・・
だって、いったい何が起こるか全く解らないんだもん。
2匹の【ノラ】はそんなこと全くお構いなし・・・
さぁ、12月12日。今夜は何が始まるの?!

「ふわぁぁ〜〜」大きな欠伸をして背伸びをした悟は、ハッと伸ばした手を下ろした。
あれ?ここは・・・そう、悟の小学校の中庭
『何で、真夜中の学校なんだ?! ・・・今夜のツインタイムもう始まってんのか?!』
「ここ、どこぉぉ〜?」背後に碧の声が聞こえた。
今夜は、【ノラ】達に背に乗ることもなく突然ここだ・・・
2匹の【ノラ】は後ろにいるだけと言うようなそぶりでまあるくなって寝始めた。
「ねぇ、ねぇ、ここはどこか知ってるの?!」碧がそう訪ねたとき
ガサッという音とともに黒い影が現れた。
「シィーッ!!」悟は小さな声で碧を制した。

黒い影は中庭の中央にある小さな囲いに向かっていった。
小さな囲い・・・それはウサギ小屋
黒い影は、そんなに大きくはない。 つまり悟ぐらいの大きさ、手に何か持っている・・・
『いけねぇ・・・ ぴょんたが寝てるのに・・・』
もしかしたら、悟は嫌な予感がした。

黒い影は、難なくその囲いのドアを開けて中へ入っていく。
恐らく、寝ていたぴょんた達が声にならない声を上げた!
「キィ!!」
思わず、悟は飛び出した。「なにしてるんだよ!」
急に声をかけられた黒い影は驚いて振り向いた。その手にぴょんたが捕まえられていた。

「あれ? 悟じゃないか?! 何でこんな時間にここにいるんだ?! おまえ、誘った覚えはないぞ!」
どうやら、相手は悟を知っているらしい・・・
ほの暗い月明かりで相手の顔を確かめた悟は顔をしかめた。
「おまえ・・・昇じゃないか?! おまえこそ何やってんだ?!」

「チィッ! 見つかっちゃ仕方がないけれど・・・
おまえだって、言ってたじゃん。こいつ達がいるお陰で冬休みも飼育当番があるって。   
だからさ、俺たち相談してこいつを処分してやろうと思って。   
ところが、約束した草太が来ないで、何でおまえがいるんだ?!」   
「おまえ・・・処分って、どういうことだ?!」
「こうやって、殺すことさ!」昇はためらいもなく、ぴょんたの胸にナイフを突き立てようとした。

「やめなさいよ!!」碧が大声で叫んだ。その声に驚いた昇はナイフを落とした。
その瞬間、悟は昇に頭からぶつかった。
思わず、しりもちをついた昇は驚いてふたりを見上げてギョッとした。

「お・おまえ、誰だよ?! 悟? じゃないよな・・・ でも同じ顔・・・」
まるで幽霊でも見たように昇は後ずさりしながら碧を見た。
「アハッ! 姉ちゃんさ♪」悟はやんわり言った。
「嘘だ!! おまえ、兄ちゃんしかいないじゃん!」昇の顔は恐怖に引きつった。
「夢だから、何でもありなのよ♪」碧も軽く答えた。
「夢じゃねぇよ〜〜!!」昇は転げるように校門へ向かって駈けだしていった。

「ノラ!! 連れ戻して!」間髪を入れず碧は叫んだ。
「エッ?!」思わず碧をのぞき込んだ悟・・・
「わかんない?! このまま逃げたら、なぜいけないことなのか解らないのよ。
ただ、驚いて逃げただけで、きっとまた同じ事をするわ!」
「ヘェ〜、そっか・・・」悟は碧を見直した。
『うん、やっぱり姉ちゃんかも・・・」変な納得。
もちろん、2匹の【ノラ】は碧の言葉が言い終わらないうちに昇に向かって走り出していた。

可哀想なぐらいカチンコチンになって昇がの猫【ノラ】の背に乗せられて帰ってきた。
顔は真っ青、歯はガチガチなっている・・・
「別にね、あんたを虐める訳じゃないけれど、どうして【ぴょんた】を殺しても良いと思ったの?」
碧は真剣に訊ねた。
「だって、だって・・・ヒック・ヒック」昇は半べそをかきながら言葉を選ぶようにしゃべり出した。
「お父さんが、お母さんに言っていた・・・ 走っている車の前に猫や犬が飛び出したら轢いても良いって。」
「ハァ?!」碧は意味が飲み込めない。もちろん悟も・・・
「だからさぁ、人に都合の悪い物は死んでも良いんだ・・・って思った。」
昇の声はだんだん小さくなった。

「ハァ・・・」碧が大きな溜息をついた。
「あんたさぁ、私たちと同じ年なんでしょう?!
もうちょっとらしい返事してくれない?!
それは、あんたのはこじつけでしょう?! 【ぴょんた】があんたに何をした?
この小さい檻の中で、頼るのは世話をしてくれるあんた達だけでしょう?!
それを何?! 冬休みの飼育当番が辛いから殺すって?!
おかしいでしょ?! そんな理屈通るはずがないでしょ。
世話したくなかったら、そう言えばいいのよ。
誰かが変わってくれるかも知れないし、叱られるかも知れない。
でも、なにか良い方法があるかも知れないでしょ。
何も知らない【ぴょんた】の命を奪ったら二度と生き返らないのよ。
仲間のみんなは、決して喜ばないどころか殺した人を憎むわよ。
命はゲームじゃないの!!」
一気に碧はまくし立てた。悟は一瞬ポカーンとした。
『碧って・・・オイラよりずっと大人だ・・・』まずは脱帽の悟。

昇はだんだん小さくなって、すっかり肩を落として涙と鼻水で顔はクシャクシャ。
「ごめんよう〜、ごめんよう。もう二度としないから・・・」
「解ればいいのよ、別に今夜のこと誰かに話しても良いからね。」
妙に優しい声で碧は昇に言った。
「誰にも言わないよぉぉぉ〜」

【ぴょんた】はウサギ小屋で長い耳を両手で人が髪を洗うように毛繕いしていた。
「ミドリ・サトル、アリガト・・・」そう言った声がふたりに聞こえたかな♪   
クヌギの爺さんとの約束がひとつ果たせたよう・・・


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