タイトル

クヌギの爺さん

初めてのツインタイムが終わった。
碧も悟も一瞬、力が抜けたような夜明け。
同じ夢を見たらもう一度会おうなって・・・
そんな面倒くさいこと、ちっとも必要じゃないんだ。
ちゃんとふたりで、ツインタイムが始まっていた。
フフッ♪ これは【ノラ】達と【ツインズ】の秘密。
自分たちにどれだけのことが出来るか解らないけれど、小さなSOS
しっかり受信したからね。

そして・・・季節は木枯らしが舞い始めた11月
今日は11月11日。
「おやすみなさ〜〜い!!」   
いつになく早く、寝床に向かう碧(悟)
家人達はハテナ顔で見送った。

眠ろう、眠ろうとするとなかなか睡魔はやってこない。
逆にあれこれ考えていたら、だんだん目が冴えてきた。
ふと、あのタンポポさんのところへ行けるのかしら?!
そう思ったとき、2匹とふたりはスッとこの間の場面にとけ込んだ。
時計は・・・12時を告げていた

「ウワッ! この前と同じ場所だ!」悟が声を上げた。
「つまりぃ・・・私たちは、夢の続きを過ごせる訳ね?!」   
碧は二匹の【ノラ】に訊ねた。
【ノラ】達は返事の代わりにしっぽを振った。
「じゃぁ、どうすればいいか、考えましょう♪」

と言ったって・・・どちらにしても小さな苗木を植え替えなくてはいけない。
どこにする?! よそのお家のお庭には移せないし
一番安全なところ??? それは山の中???
「でも、タンポポさん。私たちが来られるのは月に一度。それも1年限りだよ。
それで、間に合うのかしら?」碧が不安そうに訊ねた。
「お家の取り壊しは春から・・・ だから春までに・・・」
タンポポさんはやっとそう言った。

「植え替える場所を探そうや!」悟の言葉が言い終わらないうちに【ノラ】は悟を背に乗せて宙を飛んだ。
「ハハッ・・・飛ぶ前は言ってくれよな。オイラ、心構えがいる。」
情けなそうな、悟の声に「クスッ♪」と碧が笑った。
2匹の【ノラ】はふたりを乗せて山の奥へ飛んでいった。
そして沢の近くで降ろした。

真っ暗な闇の中・・・森は寝静まっていた。
道は・・・ほとんど無い、獣道だけ。
こんなところ初めて、碧は悟の背に隠れるように後に続いた。
「オイ、ノラ! こんなところに連れてきて本当に大丈夫かぁ?!」
悟が【ノラ】達を問い詰めたとき
「コォ〜ラァ、おまえ達。 ここから先は入ってはならぬ!!」
どこか地面からうなるような声が聞こえてきた。

「キャッ!」碧は耳を伏せ悟に飛びついた。
真っ暗な空からパラパラと何かが落ちてきて、碧と悟に当たった。
「あっち いけ!」「アッチ イケ!」
当たる度にそう言っているような気がした。
よく見るとクヌギの【ドングリ】達だ。

見上げると樹齢ん百年と思わせるようなクヌギの大木
まるで・・・森の番人のようだ。
「オッス! オイラ達ちょっと頼みがあって来たんだよ!」
悟は臆するようなこともなくクヌギの大木に向かって叫んだ。
するとクヌギの大木は
「おまえ達の話しを聞く必要はない。 早く森から出て行くが良い!!」
「出て 行け!」 「デテ イケ!」またパラパラと【ドングリ】達が落ちてきた。

「オイラ達、サクランボの苗木をどこかに植えさせて欲しいんだよ、それだけなんだ!」
もう一度、悟はクヌギに向かって叫んだ。
「ならぬ、人間世界の物はなにもいらぬ。持ち込んではならぬ。」
クヌギは頑なにそう言いきった。

困った悟は、【ノラ】達に『どうしよう・・・』心に問いかけた。
すると・・・今まで真っ暗闇だった森の中が突然パァ〜ッと輝き始めた。
お月様が・・・そう、お月様が夜空一杯に輝き始めた。
ホラッ♪ ムーンロードがクヌギの大木までまっすぐに。
ゆっくり、天上から銀色キャット・ジジが降りてくる。

銀色キャット・ジジはゆっくりと・・・
そして懐かしそうに辺りを見回しながら降りてきた。
その後ろからは・・・月の妖精ルナがコバルトブルーの羽をはばたかせて・・・。
ん? 【ノラ】達は?!
アハハ、ルナが現れると2匹の【ノラ】は抱き合ってお休み中。

「久しぶりじゃな、クヌギの爺さん。」銀色キャット・ジジは愉快そうに言った。
クヌギの大木は、気安く【クヌギの爺さん】と呼ぶ変なやつを凝視した。
「・・・・・」   
「わしじゃよ、わし・・・」銀色キャット・ジジはもう一度呼びかけた。
「おおぅ・・・あなた様か!」
やっと、誰か解ったクヌギの爺さんは懐かしそうに叫んだ。
「この子達はわしの知り合いでの。 ちょっと訳あり何じゃが・・・ハハハ
出来れば、願いを聞いてやって貰えぬかな?!」
銀色キャット・ジジはどうやら助け船を出してくれたらしい。
「う〜〜む・・・」
クヌギの爺さんは考え込んでしまった。

「あなた様が、そうおっしゃるのなら聞き届けぬ訳でもないが・・・   
ただ、人間は我々のあらゆるものを破壊してしもうた。
ひとつだけ条件がある。今、まさに失われそうな三つの生命を助けて下さらぬか?
もし、この子達にそれが出来るのなら・・・サクランボの苗木、預かろう。」

なんだか解らないけれど、とてつもなく大きな交換条件を出されたみたいな気が・・・
「フムフム、大丈夫じゃ、この子達なら! ホホホッ♪」
銀色キャット・ジジは碧と悟の心配をよそに愉快そうにもう一度笑った。
「ホッホッホ♪」

「3つの生命ぃ〜・・・?!」
なんのことかさっぱり解らない碧と悟。   
でも、これをクリアしないとタンポポさんのSOSには応えられない。
「夢だから、何でもありなんよ♪」
碧は希望的見地かあきらめか良く解らないけれど・・・
自分に言い聞かすようにつぶやいた。
悟は・・・「アイヨ、姉ちゃんについていくよ」

なんだか良く解らないけれど、意外な方向に舵がきられたよう。
春まではまだ少し時間がある・・・
きっと【ノラ】達が目的地に連れて行ってくれるだろう。
碧も悟ももう何が起きても驚かないような気がした。
だって・・・
こんな事現実にあるはずないんだもん。

月の妖精ルナがふたりの耳元で囁いた。
「だいじょうぶよ、きっとうまくいくわ♪
ホラッ、今日はもうタイムリミットよ。」
おっと、3時まで後秒針3秒!!


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