タイトル

綿毛のふるさと

シャー〜〜
不思議なことに犬の【ノラ】は“ゴールデンレトリバー”ぐらいの大きさになって
碧を乗せて飛んでいるし
猫の【ノラ】は“ピューマ”ほどの大きさで悟を乗せて
猛スピードで夜空を翔ている。

「みどりぃ、こんな事絶対あり得ないよな?!」
【ノラ】の飛ぶ速さにビクビクしながら、やっとの事で首にしがみついた悟は
今にも泣き出しそうな顔で碧に言った。   
「バカねぇ〜、夢なんだから何でもありなのよ♪ 下手なTVゲームよりずっと面白いわ!」
茶目っ気たっぷりの笑顔で悟に振り向いた。
『あれ?!・・・いつの間にか主導権はあいつだ・・・
でも、なぜか納得してしまうオイラって・・・ヤッパ、ツインかな??』
フフッ、そんな碧がちょっと眩しい悟。

やがて・・・うん? どのぐらいの時間翔たのかふたりには解らないけれど
真っ暗闇の地上にポッと光のスジが湧き上がって来る。
小さな点のようにも見えるけれど、いくつもいくつも・・・
目を凝らして見つめたふたりの先には小さな古びたお家の庭先。
そう、タンポポの綿毛が真夜中だというのに次々、次々夜空に舞い上がっていた。
その綿毛のひとつひとつが小さな声で「たすけて・・・」「たすけて・・・」と叫んでいた。   
「アッ! あそこにタンポポの花が一杯♪」
「ウワァ〜、まるであかりが灯っているみたいだ!」
ふたりは歓声に近い声を上げた。

「到着ですよ。」2匹の【ノラ】は音もなく地上に降り立つと、見る間に元の姿に戻った。
このお家・・・どうやら人の気配はしない。
真っ暗なお家からは、これぽっちの光も漏れてこない。
相変わらずタンポポは沢山の綿毛を天上に向かって飛ばし続けている。

「ねぇ、綿毛さん。いったい何を助けて欲しいの?!」
碧は踊るように舞うタンポポの綿毛にソッと訊ねてみた。
「それはね、それはね・・・ ソレハネ・・・」
一斉に綿毛達が囁き始めた。
「おかあさんに 聞いてね、キイテ ネ・・・ キイテ ネ・・・」
「お母さん?!」碧も悟も首をかしげた。

ふと、足元を見るとタンポポさんのお母さん?
大きな葉っぱの固まり。
そういえば、碧はパパに昔 教わったことがあった。
草たちは地面にピッタリ葉をひろげて冬越しすること。
これを「ロゼット」と言うことを。

それでもまだ初秋のこの頃は、沢山のつぼみもつけている。
「あなたが、綿毛さん達のお母さん?!」碧は小さくかがんで声をかけてみた。
「あなたは、だあぁれ? だあぁれ?!」小さな声で返事が返ってきた。
思わず、碧と悟は目を合わせた。 タンポポさんがしゃべった!!

「私たちは、犬と猫の【ノラ】と、どうやら【ツインズ】らしい姉弟よ♪」
「おいおい、オイラが弟かい?!」ちょっと不服そうな悟。
「あったりまえでしょ、どう見たって、お兄ちゃんってタイプじゃないわ!」
碧のひと言に何も言い返せなかった悟だった・・・
「あなたたち、助けてくれる? タスケテクレル?!」
タンポポさんはようやく語り始めた。

「私のすぐ側にね、サクランボの小さな苗木があるの。
このサクランボはおばあちゃんの大切な小さな命が種を植えたの。
赤いほっぺの男の子が口に含んで、それから一粒・一粒小さなお手々で植えたの。
「芽はでないよ」というお父さんの声。
でも、おばあちゃんは「沢山植えたらひとつぐらいは出るかもね。」って
ちっちゃな男の子も、お父さんもすっかり忘れてしまったんだけれど
ひとつだけ、ひとつだけ・・・小さな芽を出したの。
でも、おばあちゃんが死んでしまって、この苗のことは誰も知らないの。
このお家ももうすぐ取り壊されて、ここは道路になるわ。
私たちは、綿毛になってどこにでも飛んでいけるけれど
まだ10cmにも満たないこの苗木は引き倒されてしまう。
おばあちゃんとちっちゃな男の子の苗木、どこかに運んで・・・」

ふ〜ん、綿毛さんの「たすけて・・・」は、こういう事だったんだ。
「ねぇ、私たちで何とか出来る?!」碧の言葉に【ノラ】達も「ワン・にゃん!」
何でも有りの冒険旅行?
ふたりの瞳がキラキラ輝き始めた。
いったいこれからどんなことが起こるんだろう。
アッ、アッ、ア・・・
時間がない、3時まであと10分・・・


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