タイトル

母の旅立ち

親父が向こうに逝って、いつの間にか15年が過ぎた。
母ちゃんはいつの間にか白髪頭になって、何をするにも茜の手が掛かるようになった。

「 すまないねぇ〜 」

これが母ちゃんの口癖になった。

しばらくして、ずっと床に伏すようになって
延命措置はいらないと言い続けた母ちゃんの意志をくみ取って
自然死で、母ちゃんは命を終えた。   

あんなにふっくらした母ちゃんは、しぼむように小さくなって枯れた。

斎場で骨が焼き上がる迄、兄ちゃんと斎場の外に出た。
兄ちゃんが ふとつぶやいた。

「 昔、親父がよく言っていたよな。
ひとつ灸にいかなんだら、なおらんわ・・・って
ひとつ灸って何の事だろうって、子供の時に思ったけれど 聞かなかった。
今頃、わかったよ。」

「 なんだったのさ。」

オイラも分からないから、兄ちゃんにそう聞いた。

「 昔は焼き場に一本大きな煙突があったのさ。
それをそう言ったんだ・・・
でも、今は煙突なんってないだろ、だから分からなかったのさ。   
もし、煙突があって煙が西にたなびいたら西国浄土に向かってる・・・そう思えるのにさ。
なんだか、今は味気ないよな。 」

そう言いながら、兄ちゃんはは目頭を押さえていた。

しばらくして、兄ちゃんはポケットから小箱を取り出した。

「 これさ、お袋から預かっていた。 茜さんに渡してくれって。 」

それは小さな指輪の箱だ。
悟はそっと開けてみると・・・
そこには指輪でなく、小さなピンク色の丸い珊瑚石がふたつ入っていた。

エッ?! これは・・・

「 親父の最初で最後のお袋へのプレゼントだったらしいよ。
小さな珊瑚の珠だけれど、小さな花を細工してあるだろう。
本当は、ネックレスとかイヤリングにするつもりだったんだろうけれど
お金が足りなかったらしい・・・ いかにも親父らしいよな。 
それでも、お袋生涯大切にしていた。 結構似合いの夫婦だったんだよ。 」

兄ちゃんの言葉は、オイラの心を素通りしていった。
なぜって・・・

これは、これは もしかしたら ファイヤー・ストーン じゃないのか?!

碧は母ちゃん???

銀色キャット・ジジのいつかの言葉が遠くで聞こえてきた。

「 時は繰り返し 時空を越える・・・ 」

〜*〜完〜*〜

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