タイトル

パパの秘密 C

ママの話しをここまで聞いた茜が
「 おじいちゃんって怖い人?! 」
ちょっと複雑な表情で尋ねた。
「 この話だけを聞くとそんな風に思ってしまうよね 」
ママは困ったような顔をして話を続けた。

「 結局ね、おじいちゃんはお通夜もお葬式も出なかったの。
でも、その日パパの知らないことがあったのよ。
ママはパパにもっと早く話せば良かったのに   
みんなが忙しくて、つい話せなかった・・・

ママはあの日、茜もまだ小さかったし碧と一緒に家に残ったの
みんなが式場に行ってしまった後、家の中が静かになったとき
フッとおじいちゃんが台所に現れて
ママがいるのを見ると
『 ばあさんが作った飯と汁をくれ 』 そう言ったの。

ママは一瞬、驚いたけれど
『 じゃあ、温めますね。』って、慌てて返事をしたわ。
でも、おじいちゃんは
『 冷たいままでええ、ばあさんがわしのために作った飯や。』
そう言って、小さなお盆に冷たいご飯と味噌汁をのせて自分の部屋に帰ったの。
ママは胸が締め付けられるようだったの。   
その時、初めておじいちゃんの心の中を見たような気がした・・・
でも、そのことをママはパパに言うのを忘れてしまった。

葬儀・四十九日法要まで、おじさんとパパは
何もしないおじいちゃんに代わって何とかやり遂げたの。
そして、四十九日法要が終わった後でパパはおじいちゃんに
『 親父、僕は許さないからな お袋があまりにも可哀想や
もう、ここには帰ってこんから! 』
エッ?!とママも驚いたけれど、言葉を発してしまったパパは
それからずっと帰っていなかったのよ。
この間のGWまで・・・

家に帰っても、パパとママはおじいちゃんのことが禁句みたいになって
結局、ママは話さなければいけないことをずっと話せなかったの。
これはママの後悔よ。

おじさんとは、パパもママも電話や手紙で連絡は取り合っていたけれど・・・
おじいちゃんもパパも、頑固と言えば頑固よね。
それから暫くして、おじいちゃんは身の回りの物だけもって
山にこもってしまった・・・
昔、炭を焼いていた小屋があってね。
もう、誰も炭を焼く人なんっていないけれど
そこでおじいちゃんは細々炭を焼き始めたらしいわ。
もちろん売るためじゃなくて、ただ焼くだけ
おばあちゃんと一緒に飼っていた犬や猫も連れて行ったの。 」

碧はもう間違いないと思った。
やっぱり悟の言ったとおりだ
私のおじいちゃんだった・・・

「 おじさんは、おばあちゃんの七回忌の法要をどうするかずっと悩んでいたの
だって、パパは三回忌も帰らなかったから・・・
もちろん、ちゃんとお供えとかは送ったわよ。
でも、パパは帰るきっかけを無くしてしまったみたいだったのね。

そこに、碧のあの犬の話しが飛び込んできたのよ。
ママはこれはきっと天国からおばあちゃんが手を差し伸べているんだと思ったわ。
特に、親犬が【ゆき】って名付けられたとき
ママは絶対パパに言わなきゃって、
パパもママもおばあちゃんから聞いていたの。
二人が結婚して最初に飼った犬の名前が【ゆき】だったこと、
そして、やむ得ない理由で捨ててしまったこと、
二人でずっと後悔していて、そのために野良犬や野良猫を引き取っていること。
だから、あの日ママはパパに言ったの『 名前はゆきですって。 』って・・・

それからパパとママはあの日のことを少しずつ話し始めたの。
おじいちゃんがあの冷めたご飯と味噌汁をどんな思いで口にしたか、
それはきっとパパやママの思っている以上に切なく慟哭しただろうって。
夫婦の年輪が違うことにパパとママはその時気づいていなかったのね
40年以上連れ添ったの夫婦・・・言葉に出さなくても分かり合えるすべてがあったんだって。
今頃、パパとママは気づいたわ

おじさんも、この夏に遅れている七回忌をするって言うし
パパも碧がくれたきっかけできっとおじいちゃんと仲直りできると思うのよ
だって、親子なんですもの。 」

ママはホッと安心したように頷いた。
茜が「 大人は色々秘密があるんですねぇ〜〜 」と言ったので
ママも碧も一斉に吹き出した

その夜、パパとママが遅くまで話しをしていた・・・


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