タイトル

パパの秘密 A

その日、何があったのか・・・
碧は知りたいと思った。
多分、ママに聞けばある程度教えてくれるだろう。
それをパパも叱りはしないと思う。
でも、何となくそれじゃいけない、そうじゃないと思う碧だった。

今夜は6月6日、行けるかな?!
ずいぶん前の時間だけれど、戻れるんだろうか。
悟にも話していない、   
でも・・・今夜はそこへ行きたい。
そう切実に願った。

ストンッ! どこかに飛び降りた感覚を身体が受け取った。
振り返ると、悟もノラ達もいた。
ここは・・・どこか田舎、畑の中の一軒家?
ネオンや街灯で暗闇になることのない街に住む二人には
まるで、人も生き物も、建物でさえ寝静まって時間も止まっているようなこの場所にとまどった。
唯一、夜空の半月と沢山の星の輝きが煌々と地上を照らしていた

「 灯りがなくても明るいんだ・・・ 」
悟が小さな声でつぶやいた。
碧は悟の声が聞こえない様子だった。
そぉ〜っと、その家の灯りが微かにもれる窓に近づいた。

「 あっ! あの人は・・・ 」
碧が小さな声を上げた。
ほとんど同時に悟は   
「 あれぇ、あのおじさん・・・ 」
二人は別々の人を見て驚いたのだ。

「 あれっ?! 碧、あのおばさん知っているの? 」
「 ううん、知っているってほどじゃないの。
でも、何となく記憶のどこかにありそうな気がしたの 悟は?! 」
「 ん?! オイラ? あのさぁ、あのおじさんずっと前にツインタイムで見ていない?!
あの時よりずいぶん若いようにも見えるけれど・・・
ほらっ、どっか山の中の小さな小屋で寝ていた人 」
二人の時計の針がカチッと合わさった
そういえば、何もせず森の中の小屋をただ覗いていただけの夜があった・・・
あの時、おじいさんの側に二匹の犬と猫がまぁるくなって寝ていた

「 あの時のセピア色の写真の人 そして、私の記憶に中にいる人 今見たおばさん
同じ人?! そうよ、同じ人よ! 」
不意に時間がグラッとゆがんだ気がした。
いつの間にか家の中に入っていた。
でも、家の中の二人には碧も悟も見えないようだった。

「 お父さん、今日はもうこれぐらいにしてお休みになったら?! 」
おばさんはおじさんに声をかけていた。
けれど、おじさんは虫の居所でも悪いのか、
「 やかましい! 酒が惜しいんか 」
そう怒鳴って、ガラスコップを畳に投げつけた。
「 わしがわしの稼いだ金で飲むんが悪いんか! 」
あれまっ! ずいぶん悪酔いしているみたいだった。
碧のパパもママもビールを飲むけれど何時もほろ酔いで楽しいし、
悟の父ちゃんは下戸で有名らしい。
だから、本物(?)の酔っぱらいはまだ見たことがない。

よっぽど、何か腹の立つことでもあったのか?
それからもおじさんは飲み続け、ちゃぶ台はひっくり返すし
とんでもない言葉をことをおばさんに浴びせていた。
それでも、おばさんはジッと耐えているようだった。

その時、ふすまの向こうから
「 かあさん・・・ 」
そう呼ぶ声が聞こえた。
おばさんは、目頭を押さえながらそっと出ていった。
なにか向こうでぼそぼそ話し声が聞こえるけれど、ハッキリ聞こえない
ただ・・・
「 もう、いいよ 」
そんな声だけが聞こえてきた。


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