タイトル

パパの秘密

五月の新緑の香りをそのまま引き継いだような6月最初の日曜日
パパはいつもより早く起きて、碧を公園に誘った。
まだ、ベッドで寝ている茜を起こさないようにそっと・・・
キッチンにいたママは 『 わかったわ♪ 』というように
頷くと二人を見送った。

近くの公園は、碧が生まれてからずっと遊び場だった。
パパとママに連れられて、砂遊びをしたり滑り台を滑ったり
でも、小学校の高学年になると   
さすがこの公園も通り過ぎるだけになってしまった。
まだこの時間は子供達の姿もなくひっそりしていて
パパと碧だけが公園にいた。

「 いいなぁ〜〜 朝の公園は! 」
パパは背伸びをするように深呼吸した。
そして、ブランコに腰を下ろすとゆっくりこぎ始めた。
だんだん大きく揺すって、ついには碧の視界から消えた。
『 パパったら、子供みたい 』
クスッと碧は笑った。   
碧でさえ恥ずかしくってブランコを思いっきりこぐなんってことはしないのに。
パパは大きくこぎながら遠くを見つめているようだった。

どのぐらいパパがブランコをこいでいたか確かな時間はわからないけれど
おもむろにパパは揺するのを止めてザザッとブランコを止める砂音がした。
「 碧、ちょっと話しがあるんだ 」
パパは意を決したように碧と向かい合った。
「 ゆきのこと?! 」
五月の連休にパパが四国のどこかに連れて行ったゆきのことが気になっていた。
多分、その話だろうなって半ば期待していた。
ところが・・・

パパの口から出た言葉は違っていた。
「 いや、そのことはまた次の機会に話すとして
今日は君のおじいちゃん、つまりパパのお父さんのこと 」
「 えっ?! おじいちゃん?? 」

そういえば、今まで碧達にはおじいちゃん・おばあちゃんはいなかった。
ママの両親はパパと結婚する前に病気で亡くなっていたし
幼稚園の敬老の日の行事にも出席していたのは何時もパパとママだった。
だから・・・パパの両親も、もういないんだと子供心に思っていたし
大人には話したくないことだってある・・・
子供のくせに妙にませた碧がそこにいた。
だから、一度もそのことを尋ねたりしなかった。

「 パパが、おじいちゃんやおばあちゃんのこと話さないのを不思議に思っただろ?!
GWも年末も世間じゃ田舎に帰る民族の大移動なのに・・・ 」
「 うん、そうだね でも、いないんだと思ってた。 」
そう、碧は言った。

「 実はね、碧 おばあちゃんはともかく、おじいちゃんは今も元気で生きているんだ。
ちょうど、碧が五歳ぐらいの時かな
おばあちゃんが心不全で突然亡くなって・・・
それからパパは帰っていない。
おじいちゃんのあることが許せなくてね。
おばあちゃんの死んだあの日から絶縁状態だったんだ。
でも、碧が小学校卒業前に出会った『ゆき親子』のことで
パパは大切なことを思い出したような気がしてね。
GWにゆきを連れて帰ったんだ。
でも・・・おじいちゃんには会えなかった。
また、碧達と夏休みに帰ってくるからと伝言を置いて帰ってきたんだ。

お互いがんじがらめに絡まった糸がまだほぐれていないんだけれど
パパは碧達のおかげで一歩踏み出せそうな気がするんだ。
パパを応援してくれるかな?! 」

何が何だかよく解らないけれど、どうやらパパとおじいちゃんは仲違いしていて
もしかしたら、おじいちゃんの所にゆきは行ったのかしら?
「 もちろんよ! パパ で、ゆきはおじいちゃんのところ?! 」
「 うん・・・多分な。 」
これまたパパの返事はわかったようなわからないような返事だった
パパとおじいちゃんの仲違いの原因は何なんだろう。


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