タイトル

風の中・・・B

『 ファイヤー・ストーン・・・ ファイヤー・ストーン・・・ 』
心の中で何度もつぶやいたけれど結局何も分からなかった。
それに、かすかに残る誰かの声も気に掛かる
「 も・う・い・い・か・ら  ま・た・あ・え・る・か・ら 」
碧はいつものようにベットで目を覚ましたけれど
初夏の朝日が心地よく窓辺に差し込んでいた。
天井を見つめたまま、しばらく心を泳がせた。

風がやんだ・・・

そう言えば、今日は母の日 忘れていた訳じゃないけれど碧は飛び起きた。
隣に寝ている茜をそっと揺り起こす。
「 茜、起きて クッキー焼こう♪ 」
「 う〜〜ん クッキー 頂きます 」
まだ夢の中いる茜は口をモグモグさせた。
思わず、笑った碧は 「 母の日のクッキーを焼くの手伝って 」   
そう言って、茜の頭をポンと軽くたたいた。
「 母の日?! 」 この一言で茜は完全に目覚めてガバッと体を起こした。
やがて、朝の階下のキッチンで香ばしそうな匂いが流れてきた。

その日の午後、碧は悟を呼び出した。
待ち合わせ場所はもちろん花屋さんの前。
時間にほんの少し遅れてきた悟に
碧は頬をふくらませながら 「 ハイッ! これ 」
悟の目の前に可愛くラッピングされた袋を差し出した。
「 ん?! なんだこれ?! 」
「 あっ、悟にあげるんじゃないわよ 悟のお母様に♪ 
茜と一緒に焼いたクッキーよ。 今日は母の日だからね 」
「 えっ〜〜! おいら母ちゃんへのプレゼントなんって、幼稚園以来していないぜ?! 」
「 だから、だから呼んだのよ 」

「 あのね、私たちの誕生はあなたと私のお母様なしでは考えられなかったんだから・・・
信じられないような、ツインタイム 夢かしらと思うこともあるけれど
一卵性双生児風・・・の男の子と女の子のそっくりさん
結構楽しんでいるのよね
ツインタイムは1年限り、だから今年の母の日は2人でふたりのお母様にお祝いしましょ。
命の感謝を込めてね。 」
かくして悟は、ポケットのなけなしの小遣いでまっ赤なカーネーション奮発することとなった。
5本ばかりのカーネーションがえらく大きな花束に見えた。

『 今年の母の日は特別か・・・ 』
悟は鼻をすすり上げて、胸を張った。
「 うん! 似合っているよ じゃぁ、またね! 」
碧ははじけそうな笑顔を振りまいて帰っていった。
その後ろ姿がなんだか眩しい悟だった。

その夜、母ちゃんは意外そうな顔をしたと思ったら、それでなくても大きな顔が益々まん丸になった。
「 うわぁ〜〜 嬉しいわ♪ ありがとう 」
母ちゃんのお肉たっぷりの体に抱きかかえられたのは何年ぶりだろう。
へっ?! 柔らかくて気持ちよかったかな。
ふと、母ちゃんがラッピングを見つけて
「 ん?! これクッキー?! 誰が作ってくれたの?! 悟のガールフレンド?! 」
「 ガ・ガールフレンドォォ〜?! 」
悟は思わず大声を上げた。
母ちゃんはすかさず続けた。「 だって、こんなもんおまえが作られるわけ無いし お手製だよ 」
悟は言葉が上手くのどから出てこない。
「 ガ・ガールフレンド・・・じゃないな ガールフレンドは女の友達
フレンドガール 友達の女の子 うん! きっと、それだな フレンドガール 」
「 なに、それ?! 同じじゃないの 認めなさいよ、悟 初恋なんでしょ♪ わははっ! 」
母ちゃんは遠慮無しに、おいらの心の中に入ってきてのぞき込んでいった・・・
そんな気がした悟だった。


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