タイトル

風の中・・・A

やがて・・・二人の心が感じたのは果てしなく続く大地
それは砂漠の風のようにサラサラと流れていく。
天空から一滴の水
たった一滴なのに・・・
それは見る間に大地を潤し川となって谷を下り海になった。。。

「えっ? 何これ?!」碧が小さな感嘆の声を上げた。
まるでCG(コンピュータグラフィック)のようにうねりをあげて変化する箱庭。   
そして、そこに緑が育ち、やがて生き物が動き始めた。
「これって・・・ 地球の歴史?!」
恐る恐る、悟が声にした。
銀色キャット・ジジの声が地の底からゆっくりと聞こえた。

「すべての命は大地と水と光・・・」

「光合成・・・?!」
碧が理科の教科書から言葉を見つけた。
2匹のノラが二人に頭をすり寄せる。
碧と悟は座り込み、お互いのノラを抱き寄せるようにして目の前の光景を見つめた。
温かな安らぎが周りを包み込んだ。

不意に画面が変わった・・・
今度は、体が下に下にと吸い込まれていく。   
まるで、渦の中に2人と2匹が無限に吸い込まれていくように。
どのぐらいの時間、暗闇の中にいたのだろう。
いや、今も漆黒の暗闇・・・
隣にいるお互いの息づかいが聞こえなかったら恐怖の声を上げそうだった。

もしかしたら・・・ここは海の底?!
浅瀬なんかじゃない、きっと誰も見たことの無いような深淵
目が慣れてくると・・・海底に白い大きなドームのような物がかすかに見える。
あぁ・・・海空(?)と呼べるかどうか、遙か上から一筋の光がドームを目指す。
もしかしたら、月の光?! でも、こんな深海まで届くはずがないだろうに
いや、ここは碧や悟の知っている常識なんかどれも的外れに違いない。
『エッ?!』碧が、信じられないというような声を上げて暗闇をくいいるように見つめた。
「蒼いドルフィン?!」二人して、同時に声を上げた。
いや、蒼いというより月の光にキラキラ輝く銀蒼色のドルフィン

ドームに注がれた光が消えていくと、
ゆったりとドームを一周すると卵を抱くように静かにドームの上に横たわった。
やがて、ドームから小さな蛍のような輝きがひとつふたつ輝きを増していく。
「あれは・・・魂の誕生?!」悟が息を抜くような声でつぶやいた。

突然蒼いドルフィンはエメラルドグリーンの瞳をグルッと回して二人を見つめた。
「おや、おまえ達はファイヤー・ストーンを持っているね・・・」
ドルフィン自身がそう言ったのが、そう聞こえたのか定かではないけれど
とにかく、耳の中にはそう残った。
「エッ?! ファイヤー・ストーン??」
何の事やらさっぱり分からない二人
「選ばれし者か?!」もう一度蒼いドルフィンは尋ねた。
益々、混乱する二人・・・
銀色キャット・ジジが申し訳なさそうに答えた。

「なに、選ばれし者じゃなく・・・こぼれた者じゃ、ワハハッ!
しかし、どうやら偶然ファイヤー・ストーンを手に入れたようじゃ。」
そう、蒼いドルフィンに銀色キャット・ジジは言ったけれど
やっぱり二人にとって意味不明だった・・・
2匹のノラがクスクス笑って体をすり寄せた。

やがて・・・海空がほのかに紅色に染まりだした。
「朝日だ・・・」悟がボソッと言った。
その時、蒼いドルフィンは勢いよく尾びれを蹴って海空に向かって泳ぎ始めた。
尾びれが揺れる度にあぶくがキラキラ輝いて・・・やがて海をでて天空を駆けめぐったその時
蒼いドルフィンは、燃える太陽の色に染まった。
金色の鳳凰・・・ドルフィンの尾びれは羽ばたく翼に変わった。
そして、振り返るように空中にとどまると
「ファイヤー・ストーンは一度だけ願いを叶える。しかし・・・」
言葉が・・・消えた。
銀蒼色ドルフィンから金色に変わった鳳凰は静かに太陽に向かって翼を広げ一声「クゥー」と鳴いた。
羽ばたくたびに、小さな雫がキラキラ地上に舞い落ちる・・・


HOME NEXT BACK TOP