タイトル

課外授業

その日の授業が終わった後でみちこ先生はみんなに残るように言った。
「犬たちのことで大切なお話があります。」
掃除も済んだ後で、みちこ先生は神妙な顔で教室に入ってきた。

「今日はね、あの犬たちの今後についてみんなと話し合いたいと思います。
この時間は・・・みんなにとっても大切な時間であって欲しい
そう先生は思っています。」
みちこ先生は意を決したように話し出した。

「まず・・・ 皆さんの協力もあって3匹の子犬には希望者が出来ました。
1匹は、このクラスの千佳さん。」
みんなの声がどよめいた。そう、千佳の犬嫌いはみんなが知っていたから。   
「昨夜お父さんから、弟の幸太君のためにとお申し出がありました。
さっき、千佳さんにも確認したところ、幸太君のため、そして自分のためにも
子犬を家族に迎える決心をしたそうです。
とても先生は嬉しく思いました。
きっと、子犬は千佳さん家族の絆となることでしょう。」
千佳は恥ずかしそうにうつむいているけれど、その瞳は嬉しさに満ちあふれていた。

「後2匹は・・・」先生の話は貰われていく里親の話しが続いた。
ところがみちこ先生はひとこと言った。
「貰われる先は決まりましたが、ここからが大切なことです。
皆さんの中には、里親さんが決まったからもうみんな終わったって思うかも知れません。
でも、先生はその里親さんにお願いしなければいけないことがあります。
それは・・・人間のエゴで犬たちにとってはとても辛いことなのですが   
【避妊】と【去勢】です。
みんなにとっては初めて聞く言葉かも知れません。
わかりやすく言えば【赤ちゃんを出来なくすると言うこと】です。
一瞬、みんなの顔が凍り付いた。
「えっ! 赤ちゃんをできなくする?!」

「そうです、みんなにとってはショックな言葉ですね。
先生も辛い選択です。でも・・・子犬たちの飼い主さん達が繁殖を望むのなら別ですが
一頭だけしか飼わないのなら、それはぜひともお願いしなくてはいけません。
それはなぜか・・・今、人社会だからです。
動物たちにとっては迷惑な人社会。でも、この環境で彼らも生き延びなくてはいけません。
もし、今回みんなの協力が得られなければこの犬たちは、
保健所送りで数週間後には抹殺されていました。
折角生まれた命を、人の勝手で殺してしまう・・・とても残念なことですが現実です。
かといって、野放しにして野良犬が増えて千佳さんのように怖い思いもする・・・
そうならないためにはどうするか、今生きている命を守るためにはどうするか。
それは・・・殺される命を誕生させないことだと、先生は思います。

もう少し踏み込んで言えば・・・
最近人社会でも【援助交際】と言われている性に関する奇妙な言葉が出来ました。
もう皆さんも、大人の扉の手前で立っているのですから
そのことが何を意味するかおおよそ解っていることと思います。
先生は、性教育とか形張っては言いませんが
命の誕生に関する行為は決して遊びではないと言うこと、皆さんに知って欲しいと思います。
犬や猫たちでさえ生まれた子供を必死で守ります、育てます。
これから大人になるあなた方も、今回のことで命に対して真剣に考え学んで欲しいと思います。  
この度の里親になっていただく方にはこの【避妊・去勢】を必ずしていただける条件をつけました。

それともう一つ・・・
子犬は貰っていただけるところが見つかりました。
でも、親犬は・・・まだ、校長先生から頂いた猶予期間が少しあるので先生も捜してみます。
皆さんも、捜してみてください。
雪の日に捨てられた“ゆき”何とかしてやりたいと思います。」

教室は水を打ったようにシーンと静まった。
そうだ・・・母犬がいた。
『どうしょう・・・』碧は唇を噛んだ。

教室の外では・・・校長先生がこっそりみちこ先生の話を聞いていた。


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