タイトル

ポスターと千佳

みちこ先生の言ったポスターは各自がうちで書いてくることになった。
もちろん、みちこ先生は全員に強制というわけではなかった。
「書きたい人、書ける人にお願いね。」ってそう言った。
学校の帰り道、碧の側に千佳が駆け寄った。
あんまり大きな声では言えないけれど・・・千佳は犬が怖い。

「みどりぃ〜〜 子犬って怖くないの?!」不安げに千佳が訊ねた。
「ふふっ、子犬はね、縫いぐるみと一緒だよ。
うちの【ノラ】もそうだったけれどコロコロしててチィ〜〜ッとも怖くなんかないよ♪」   
「ほんとうにぃ?!」ちょっと不安そうな千佳。
「あれっ?! どうしたの?」千佳の言葉に何かを感じた碧はちょっと気になった。
「あのね・・・幸太が・・・ ううん、何でもない。 じゃあね、サヨナラ」
そう言って千佳は手を振って走っていった。
幸太は千佳の弟で、4年生。

翌日、教室のみちこ先生の机には手書きのポスターが10枚ほど積み上げられた。
子犬の絵を描いてあるの、文字だけの色々だけれどそれぞれ個性があって面白い。
それに、みちこ先生は思った。
どんな高価なポスターよりも子供達の気持ちがこもっていると。
本当にこれで里親が見つかれば・・と祈るような気持ちだった。
土曜の午後、数人でコンビニやスーパー・書店にお願いに行くことになった。   
碧は千佳と駅前の書店にお願いに行くことになった。
一応先生が事情を書いたプリントをくれたけれど
なるべく自分たちで言うようにって。

駅前の書店・・・2人は入り口で深呼吸。
やっぱり、こう言うのって勇気がいるよね。
レジのお姉さんに碧が事情を話すと、店長さんが出てきた。
「個人じゃお断りするけれど、学校がらみなら良いよ。入り口のドアに貼っておこう。」
そう言って、碧と千佳の手から2枚のポスターを貰ってそれぞれ貼り付けた。
ふたりのポスターにはちょっと過分数な頭のワンコ達の絵が描いてあった。
「ちょっと恥ずかしいね・・・」そう言いながらふたりは笑った。
「折角だから、本見ていこう。」どちらともなくそう言った。

それぞれ読みたい本のところへ・・・
碧はコミック本のところ。千佳は・・・・
千佳は「犬の飼い方」という本に手を伸ばそうとした。
その時、横から同じように手が伸びてきた。

「あっ!」と千佳が小さな悲鳴を上げた。
そう、タッチの差でその本は横から伸びた手に納まった。
「ん?!」千佳の声に驚いたその主は「ごめん、君も見たかったの?!」そう言って千佳の顔を見た。
千佳は・・・ 千佳は・・・ 言葉が出ない。
だって、今、この書店のどこかにいる碧と同じ顔をした少年が立っていた。
「みどり・・・じゃないよね?!」恐る恐る訊ねた。
「あれ?ニアミス?! みどり来ているの?」
この少年は笑いながらそう言った。

「みどりを知っているの?」千佳がそう訊ねると「まぁね!」と意味ありげな返事が返ってきた。
後ろから「良い本あったぁ〜?」碧の明るい声が飛び込んできた。
「あらっ!悟じゃないの。」意外な偶然に碧はキョトン。
『おっと・・・千佳になんって言うかな?!』碧も悟も苦笑い・・・   
「まぁ、他人のそら似みたいなもんよ。」碧がそう言った。
それでも、まだどこか納得のいかない千佳はふたりの顔をを交互に見た。


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