タイトル

団結

碧達は三月には小学校を卒業、四月には中学生になる。
二月・・この時期は小学校の総復習が大半の授業だった。
さて・・・どうやって切り出そうか、みちこ先生はちょっと不安だった。
クラスには、犬の嫌いな子もいる。
みんなが同じ条件じゃない、それをどうやって誰1人嫌がることなく
全員で乗り切るか・・・
大変なことを請け負ったのでは?! そんなことも頭をかすめた。
とにかく、あの親子は今生きている。子供達と考えよう。
胸を張って教室の戸を開けた。

ざわついていた教室は一瞬、静かになった。
日勤当番が「きり〜つ!れい!」
20人足らずの子供達。   
ふと、みちこ先生は自分のことを思い出した。
戦後のベビーブームの最後ぐらい、各教室に40人近くいた。
それと比べれば何と少なくなったことだろう。
あの時の教師に比べれば。。。
みちこ先生は自分自身を奮い立たせた。

「おはよう、みんな。この時間はちょっと時間割を変更して
みんなと話し合いをしたいと思います。
知っている人もいますが、このクラスの受け持った掃除場所
体育館外側の奥に親子の犬が一昨日捨てられていました。
比較的おとなしい犬ですが・・・犬の嫌いな子は気をつけてね。
それと・・・これからが大切なことなのですが   
先生は校長先生から二週間の猶予を頂きました。
つまり、この親子をどうしたらよいかみんなで考え、どうするか
この親子の幸せのため、自分たちに出来ることを
このクラスの最後の課題にしようと思います。
まず、みんなの意見を聞かせてね。」

子供達は正直だ。飼ってあげたいと声にする者もいれば
「誰かが捨てたのに、何で僕たちが考えなあかんの?」
そう、問うてくる子もいた。
そう言われれば愚の音も出ない。
それでも、みちこ先生は訴えた。
「そうね、大人にしろ子供にしろ捨てた人が一番悪いわね。
でも、あの親子は今生きているの。お腹をすかせているの。
自分と置き換えてみて? 悲しくない? 辛くない?」

しいんと静まった教室で、思い切って碧が声を上げた。
「私、助けてやりたいです。何とか飼い主見つけてやりたいです。
保健所に行くのは・・・殺されるのでしょう?!
みんなで、何とかしようよ!! 死ぬために生まれたんじゃないよね、先生。」

碧の言葉はみんなの心を打った・・・
「そうよ、死ぬために生まれたんじゃないわ。生きるために生まれたのよ。」
みちこ先生も静かにそう言った。
「ゲームで死んでも生まれ変わる架空の生き物じゃなく
みんなと同じような血が身体を流れているの。
お腹もすくし、感情もあるのよ。命ってそう言うことなの。
みんなで守ってみない?!」
小さな瞳がキラキラ輝いて「先生、何すればいい?!」
誰とはなく声になった。

「ずっとここに置いてやれないけれど、二週間は段ボールでも
何かででも住処を作ってやらなければいけないわね。
母親の首輪と鎖は先生が用意するわ。
まず、親子にとって安全な場所を作りましょう。
それと・・・
みんなで子犬たちを飼ってもらえるところがないか訊ねてみましょう。
ポスターを作って貼るのも良いかもしれないわね。」

小さな子供達の団結、それでもきっと大きな波になる、みちこ先生はそう思った。
早速、放課後男の子達は段ボールで小屋作り。
完璧とは言えないまでも、二週間の仮住まい。段ボールは結構温かい。
ドッグフードは碧が持ってきたのをそのまま使った。
もちろんみちこ先生のも・・・
何とか仮に飼う条件が整った。
子犬たちは母親のお乳にしがみついていた。


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