タイトル

青の洞窟

時計の針が12時を打った・・・
「ダメ、ダメ!! 今回は無理よ!!」
碧の絶叫に近い声でオイラは気がついた。
ん? ここはどこだ?
今回は何かとんでもないところにオイラ達来てしまったようだ・・・
碧は引きつった顔でオイラに言った。
「今回は、あんた一人に任せるわ。だって・・・だって・・・私、泳げないのよ〜〜!!」

天空にはお月様がまばゆいばかりに輝いていた。
もしかしたら・・・お月様、笑っていたかも。
月の浜辺というと何となくロマンチックなんだけれど、真冬の浜辺はとてもそんなムードじゃない。   
それでもパジャマ姿のオイラ達、寒さは感じない・・・やっぱり夢の中?!
押し寄せる波と、砂浜のノクターンが結構ファンタスティック♪
「おまえさぁ、いつも言ってたじゃん。『夢だから、何でもありなんよ』って。
現実に泳げなくたって、何とかなるさ。で、今回の依頼人(?)はひょっとして海の中?!」
碧は頷きながら浜辺を指さした。
その向こうで2匹の【ノラ】達が何かとじゃれていた。

「ウソッ!」思わずオイラは言った。だって・・・鯛なんだぜ。
まだ、小鯛みたいだけれどなんか必死に【ノラ】達に訴えている。
「オカアサン ガ エサ ヲ タベラレナイノ、オネガイ タスケテ!」
って。。。どういうことなんだ?!
猫の【ノラ】が怪しそうな瞳をオイラに向けて「にゃ〜〜ん」
すり寄ってきた【ノラ】の声が聞こえてきた。   
「コノコ ノ オカアサン ツリバリ ガ クチ ニ ヒッカカッテ トレナイ」
「おまえ、今朝 かあちゃんに鯛ほぐして貰わなかったっけ?!」ちょっと意地悪を言ってみたけれど、
そんなこと知らん顔という風に、シッポをピンと立ててもう1匹の【ノラ】にすり寄った。

とにかく、鯛のおかあさんのところへ行かなくては。
「じゃ、行くぞ♪」オイラは碧の手を引っ張って、海に向かって突進。
碧の手は氷みたいに冷たかった。その後をノラ達が走ってきた。

ホラッ! 海の中も夜空をを翔るのも一緒だ。
気持ちが良いぐらい、身体が軽く海の中に潜っていく。
碧の不安そうな顔からやっと赤みが差してきた。
「大丈夫みたい・・・」ボソッと碧が言った。
碧とオイラ、二匹のノラが海の中を舞っているような感じ。
どのぐらい深く潜っただろう・・・名も知らない小さな魚の群れとすれ違ったり
昆布の森やイソギンチャクの岩をどんどん通り過ごしていった。

先頭で泳ぐ、小鯛は懸命に案内しているようだ。
途中で顔見知りの魚たちが声を掛けても返事をするまもなく猛スピードで通り過ぎていく。
「モウスグ モウスグ・・・」小鯛の声が聞こえてきた。
やがて、海の中の小さな洞窟に案内された。

その奥・・・おかあさん鯛は、殆ど動けない状態でじっとしていた。
オイラ達を見つけたおかあさん鯛は、一瞬身をひいたようにも見えたけれどすぐあきらめた。
「オカアサン キット タスケテ クレルヨ」小鯛は飛びつくようにして言った。
「どうする?!」碧が困惑したようにオイラを見つめた。
生きている鯛の唇から釣り針を抜くなんって芸当、オイラ達に出来るかな?
何しろ、釣り針ってやつは取れにくいんだ・・・
それに、鯛の背びれや胸びれって針みたいに痛いし。
あんまり時間を掛けてやっているとおかあさん鯛弱っちゃうし、困ったなぁ〜

そこで、碧がおかあさん鯛を胸に抱えてオイラが釣り針を取ると言うことになった。
もちろん、碧も生きている魚を触るなんって初めて。
怖々だけれど、勇気を振り絞っていた。
おかあさん鯛は暴れる気力もすでになく、スッポリ碧の胸に中に収まった。
オイラは一度のチャンスで取れるように祈った。
釣り針の刺さり方を何度も確認して、大きく息を吸い込んで・・・「ヤッ!」

その瞬間、おかあさん鯛の眼から大粒の涙・・・ううん、真珠が落ちた。
赤い血が少し水の中に広がったけれど、オイラの手の中にちゃんと釣り針はあった。
碧が手を離すと、おかあさん鯛は嬉しそうに泳ぎだした。
「アリガト アリガト ヤサシイ ヒト ネ。 ワタシ ノ ナミダ オレイ ニ アゲル」
そう言って、また大粒の涙をひとつ。
碧の手のひらにピンク色の真珠が2粒。

「ワンワン! モウスグ サンジ!!」
【ノラ】が時刻を知らせた。
初めての海の底、碧もオイラも急いで上を目指して泳ぎ始めた。
泳げないはずの碧が楽しそうに、足で水をけっていた。
チッ・チッ・チー
あの真珠・・・もちろん、碧の手の中。


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