タイトル

プロローグ

私は・・・死にたいと思った。
漠然と死ぬ方法を考えてみる。
家族に迷惑のかからない方法・・・
そんなものあるはずもなく、かと言って
身体は至って健康そのもの、命に関わるような症状は何ひとつない。
病んでいるのは・・・心だけ。
苦しんで死ぬのも嫌だと妙な納得をする。
結局は本当に死ぬなんって事は、出来ない人間だと今更ながら思い知る。

顔も知らぬ、想い出も持たぬ、捕まえようのない【母】に向かって
「あなたが逝ったとき、なぜ私も連れて行ってくれなかったの?
生まれて間もない赤子なら、そう難しいことでもなかっただろうに・・・」   
そんな不謹慎な言葉が唇から漏れる。

ところで、もし私が本当に死んだら・・・
夫は『この野郎・・・』と歯ぎしりを咬みながら喪主を務め
老齢の養母は涙も出さず明日の我が身を案ずるかも知れない。
そして・・・息子達は
夫に非難の目を射るのだろうか?!

この坂をあがりきったら・・・
本当の幸せがある、自分がある。
そう何度も思いながら、あがりきれぬ心の坂。
やがて、私は阿修羅のごとく醜い顔をして、心の泥沼に沈む・・・

ただ、夫の名誉のため言っておくが、決して私は彼を憎んでいるのではない。
逆に感謝しているし、公然と「愛しています。」などと言える年代ではないけれど
もしもの時は「今まで有り難う。」という言葉を残したい。

あぁ〜・・・   
今日もまた、時間の扉が開く。
昨日と同じ、今日がまた始まる・・・
闇の中で何かを捜しているような私を、私自身が見ている。

ある日の午後TVのスイッチを入れる、画面から声が飛び出す。
「それは、アァータ アルコール依存症よ。
間違いないわよ、アァータ。一度お医者様に看て貰いなさい。」
人気キャスターが、こともなげに言った。
『あんたに何が解るのよ・・・』そう心の中でつぶやく私。
それを見抜いたように
「アァータ、ワタシは7歳からお酒飲んでいるから解るわよ。」ときた。

おなじみのお昼のワイドショーの人生相談コーナー。
アドバイザーと呼ばれる人たちは一昔前のタレント4〜5人。
どこのどなたか存じませんが、全国ネットの番組に人生相談なんって・・・   
何の解決にもなるもんですか。
芸能界、業界と呼ばれる畑ばかり歩いている人たち
同じ人間でも天秤に乗る秤が違うわよ。
同じ事なら・・・
「アァータ、私たちに相談したって何の解決にもなりませんわよ。」
はっきり、そう言ってやるのが親切じゃないかと思った私。
ん? 私の心は荒んでる?!

私はお酒を全く飲まない。
飲めないのじゃなくて、「飲まない」
仮に飲んだとしても「旨い!」と感じることは恐らくない。
これは【お酒】に責任があるのではなく、私の心が拒絶しているから。
これから先も、きっと変わらない・・・

全国 の星の数ほどの家庭、このお酒による【功罪】で
どれだけの人が涙しているだろうか。   
至福の一杯から崩壊の一杯になるにはそう時間はかからない。
もしかしたら、この物語も一杯のコップ酒から始まったのかも知れない・・・


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