タイトル

二の糸 B

これだけで終わったのなら・・・何度そう思ったことか。
幾ら、神様でもそこまでは。
ところが、ドッコイ。 現実は とてつもないことが待っていた。
「ぼんくら」が「ぼんくら」たる所以とは言え、人に話せるような事ではなかった。

強制帰郷して数ヶ月後、某老健施設の厨房で働き始めた「ぼんくら」。
「ぼんくら」は働くことは決して嫌いではない。
不規則な時間帯でも、文句も言わないし給料の不足も言わない。   
それが、パートであろうと契約社員であろうとこだわらない。
正社員は最近では新卒でないとなれないのが殆ど。
与えられた仕事は、何とかこなしているらしい。
少々、口が悪いのが玉に傷だけれど(どんな玉だか・・・)
このまま、少しずつでも借金返済をと思っていた矢先、事件が!

「ぼんくら」の誕生日が明日という日
その日家の近くに、おばちゃんの乗った軽四が止まっていた。
見かけない車だな・・・と思いながら犬の散歩に行った。
そしてその日から10日「ぼんくら」は消息を絶った。

数日前、突然職場を辞めたとは聞いた。
理由を問う私に「いつまでもパートやけん、契約社員にして貰えるとこ捜すわ。」
『おまえの仕事ぶりが悪いから、契約社員にもして貰えないじゃないの?!』   
その言葉を飲み込んだ・・・
すでにその時は、もう辞めた後だったから、相談にもならない。
しかし・・・何か変?!

携帯に電話を入れても全くでない。
夫と私はすでに腹をくくっていた。
男の子だし、成人しているし、何かあれば警察から電話があると
その時は、死んでも仕方ないと思っていたし
よもや、こんな事が起こるとは思ってもいなかった。

電話はいつも夫のいない日(仕事日)の夜にかかってくる。
「○○署の**と申します」
○○署は日本の真ん中。覚悟の電話かと、つばを飲み込んだ。
ところが・・・・
「お宅の○○君が、お友達と喧嘩をして車から降ろされたそうです。
ご両親に無断出てて来たと言うことなので、ご連絡しました。
息子さんと変わります。」
なにぃぃ〜〜!!

留置所で一晩おいてくれと頼む私に、電話の向こうの警官は
「1万円貸しますから、これから帰らせます。」
ところが1万円では、帰ってこられない。
結局、深夜名古屋まで夫と迎えに行った。
そして衝撃の事実・・・

名古屋駅であった彼は髪の毛も脱色して人が変わっていた。
たった、10日しかたっていないのに。
その時、ふと私の脳裏にあの軽四が浮かんだ・・・
もしかしたら?!
「おまえ、世持ち、子持ちのオバサンと逃げたの?!」
私は崖っぷちに立った・・・

まさか・・・TVドラマじゃあるまいし、こんな事現実に起こるわけないよ。
そう自分に言い聞かせても「ぼんくら」の沈んだ返事がひと言。
「うん・・・あいつのこと悪ぅ思わんといてな・・・」
って、サラ金にも増して青天の霹靂とはこのこと。
家庭を壊した、これは私にかなりのショックだった。

一睡もせず、深夜高速道路を下った。
後部座席の「ぼんくら」は熟睡しているのか、振りをしているのか。
いったい、これから先どうなるのだろう・・・
今は考えまい、考えたくない・・・
私は、この子にどんな教育をしたんだろう。
夫への申し訳なさ、もちろん壊れた家庭にも。
いるであろう、幼いこども達
とにかく、今は考えたくない・・・


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