タイトル

面影

時間がないというのは・・・
何とも不思議な世界です。
それでもチビはお花畑で寝たり起きたり・・・
自由な、本当に自由な夢の世界にいます。
時折、ゴンがはねてきたり 
クロが巡回しているようなお花畑。

ある時・・・
お花畑の奥、ずっと奥の小さな花びらの中に
本当に小さな青い服を着た女の子が座っているような   
そんな気がしました。
でも・・・なぜかはっきりしないのです。
顔もあるようでない、人間の女の子らしいのですが。
でも、ゴンやクロのようには近づけないし、
チビの記憶にもないのです。

ルナにソッと訊ねてみました。
「あそこ・・・お花畑の奥の花びらに小さな女の子がいるよね?!」
「あなたには見えるの?!」
ルナは少し驚いて答えました。
そう・・・
その女の子はゴンやクロには決して見えなかったから   
「天上にはね、色々不思議な現象があるの。
でも、それは決して悪い事じゃなくて
大切な大切なことなのよ。」
それ以上はルナは語りませんでした。

いつかルナは言いました。
『一等大切なことは、神様が話して下さるわ・・・』と。
きっとそれなんだ、チビはなんだかそんな気がしました。

やがて・・・地上には秋が訪れました。
チビが毎日歩いていた散歩道は曼珠沙華の燃えるような赤です。
栗のイガもはじけています。
もう、地上に降りることは出来ないけれど
時折お花畑のすきまから懐かしい風景を見ることが出来ます。
マムのメールの『落ち穂ブドウ』・・・食べ頃です。

「チビや、わしを呼んだかの?!」
「エッ!」
思わずチビは振り返りました。
神様が優しい目でチビを見つめていました。

「ここは声に出さずとも伝わってくる。
おまえがわしを呼んでおったよ。ホッホッホ♪」
なんだかチビは心を見透かされたようで
恥ずかしくなってうつむいてしまいました。
・・・でも、聞いてみたかったことがあったのです。
それはルナの言った同じお花畑じゃないということと
女の子のこと・・・

「それはな、面影なんじゃよ。
チビの心を通してマムの心に映った面影・・・」
チビは神様になにも訊ねませんでしたが
神様は心を読むようにそう答えました。

「おもかげ・・・?」
チビには神様がおっしゃったことが良く解りませんでした。
「そうじゃな、少しは話してやらんと解るまい。
それに、これは命の再生にも関係あるし
どうじゃ、ゴン、クロも一緒に耳をかさんかの?!」

笑いながら神様はお花畑の真ん中の
雲の椅子に腰を落とされました。
その周りには三匹の犬とルナ
そよ風が、チビの頬をなでていきます・・・


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