タイトル

星くずのメール

天上に還って、チビは何度目かの朝と夜を感じました。
でも、ルナが言っていたように時間はきっと止まったままなのです。
お腹もすかないし・・・
今日だか、昨日だか解らない不思議な世界にいます。
まだ、薄暗い夜明けです。
ルナがかご一杯の星くずを抱えて飛んできました。

「チビちゃん、おはよう。
今日はマムからメールが届いているわよ。」
ルナはそう言ってかごの中の星くずをお花畑にちりばめました。   
「朝露に輝いて、一度っきりメールが開くの。
お陽様が天上に昇ってしまうとメールは消えてしまうわ。
今のうちにしっかり読むのよ。
クロ、ゴン、あなた達にも届いているわよ♪」

「ウワッ!! 僕にも♪」
ゴンは嬉しそうに駆け寄って自分宛のメールを捜しました。
「あぁぁ〜〜、マムの匂い・・・
『ゴン、元気にしているかな? チビがそっちへ逝っちゃったよ。
仲良くしてね。』そう書いてあるよ、クロ兄ちゃんは?!」

実はこう言うのは本当は照れくさいクロなのです。   
嬉しいけれど、はっきり嬉しいとは言えないクロ・・・
「ヘッ!面倒くさいな?!」
そう言いながらマムからのメールに目を落としました。
『クロ、久しぶりね。だんだんそちらが賑やかになっていくわ。
やんちゃさんがいてお守りに大変だろうけれど
マムが逝くまで、しっかりお兄ちゃんしてね。』
「フン!」そう言って真っ黒の鼻を天にむけました。
けれど・・・まんざらでもないのです。
内心嬉しかったりして、心がほんわかしてきました。

そしてチビは・・・
マムからの初めてのメール、ドキドキしながら読み始めました。
『チビ、そちらの生活には慣れたかしら?!
クロやゴン、それにもしかしたら
会ったこともない命に巡り会うかも・・
ラッキーがね、淋しがっていますよ。
喧嘩仲間がいなくなったって(笑)

あなたが逝った、猛暑の夏からほんの少し秋が漂い始めましたよ。
そして、葡萄畑の落ち穂ブドウが
あなたの好きな食べ頃になってきました。
散歩道ダッドとつまみながらあなたのことを思い出していますよ。』

注)落ち穂ブドウ→実際に下に落ちているのじゃなくて、木に残っていて
出荷出来ない等級はずれの葡萄。晩秋には甘くて美味しい。

懐かしい、マムの香りです・・・
チビは自分の瞳にしょっぱいものが流れるのが解りました。
「マム・・・」そっとつぶやきました。
住むところは違ってしまったけれど、マムは忘れていない・・・

ゴンが後ろからメールを覗いていました。
「チビちゃんも、あの葡萄好きなんだ! 僕もさっ♪
それに柿も美味しいし、バナナも美味しいよ。」
ゴンは嬉しくてたまらないようにワンワン吠えました。
「ケッ! 犬はそんなもん食わないんだよ。」
ぼそっとクロがつぶやきました。

・・・やがて
お陽様が天上に昇り、星くずは泡のように消えてしまいました。
でも、三匹の犬の心の中には
マムのメールがしっかり届けられました。


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このコーナーの壁紙用photoはひまわりの小部屋からお借りしました。