タイトル

葬送

いつのまに眠ったのか・・・
チビはお花畑の真ん中で深い眠りに落ち込んでいました。
ふと気が付いたとき自分だけしかいませんでした。
でも・・・クロもゴンもどこか、このお花畑のどこかで
心地よい眠りについている・・そんな気がしました。

後ろに人の気配を感じて振り返ると
神様が「シィィ〜ッ」と人差し指を口に当てて微笑みました。
「ん?」チビが首をかしげると   
その手で大きく円を描きました。
そこには・・・
見えてきたのは地上のあるお山です。
それも見たことのあるお山・・・
あっ! ダッドとマム♪
思わず身を乗り出しそうになりました。

まだ夜明け・・・
山の霧がうっすらと溶けかけています。
ダッドは何か大きな段ボールを抱えて山道を登ります。
マムは・・後ろから小さな袋と水の入ったボトル。

「神様、もしかしてあれは・・・」
「そうじゃよ、チビ。
おまえの葬送、ダッドとマムのおまえのための葬送。」
「神様、あそこはねダッドとマムの
お父さんとお母さんが眠っているところ   
お墓がある所なんだよ。」

いつの間にかクロとゴンもそぉぉっと覗いていました。
小さな声でゴンが言いました。
「僕もあそこで眠っているんだよ」
クロは「フン! どこだって良いんだ。」
ちょっと切ないクロでした。

クロは・・・ダッドとマムのお家の近くを
流れる川の橋桁の下で眠っています。
でもそのときは、三つだったマムの息子が中学生になっていて
マムと一緒にクロのお墓を作ったのです。
今そこは、夏の初めには蛍が舞います。

やがて、お墓に辿り着いたダッドとマム。
大息を付きながら場所をどこにしようか考えています。
やっぱりゴンの横です・・・
ダッドが鍬で掘って、マムが土をのけます。
チビが納まるだけの穴が出来ると
「もういいかな?!」ダッドが言いました。
マムは「そうね・・・」と言って段ボールを振り返りました。
そして・・・

段ボールの中にはタオルケットにくるまれたチビが
安らかに眠っています。
中には、番茶とお線香、そしてドライフードが入っていました。
番茶は消臭・・・人と同じように

意を決したようにマムがチビを抱え上げました。
マムの手にすっぽり収まったチビは
本当に眠っているようでした。
ダッドがふと「もしかして、まだ生きてる?!」
不安そうに聞きました。
「ううん、もう逝っちゃったよ・・・でも、安心しているみたい。」
そう言って、穴の中に納めました。
そして、番茶も、お線香も、ドライフードも
みんなチビの懐に入れて
ふたりで土をかけました。

「お休み、チビ。マムもいつか逝くからね、待っててね。」


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