タイトル

エピローグ

あのうだるような暑さがいつの間にか遠のき
落ち穂ブドウが熟し、柿の実も金色に輝き始めた秋の夕暮れ
ダッドとマムはいつものように小さな山を越えて
犬たちの散歩に出かけます。
熟した落ち穂ブドウを食べるゴンもチビも今はもういません。

三匹の犬たちは・・・
チビがどこか遠くへ行ってしまったこと・・・
知っているのでしょうか?!   
【死】という言葉を持ち合わせない彼ら
今日もダッドとマムの後先になりながら歩いていきます。
散歩の先には温かな我が家があります。
安心して眠ることの出来る我が家・・・

マムが、ふと足を止めました。
初秋・・・マムの眼の先に真っ白な梨の花が咲いています。
「季節を間違ったのね・・・」
アオスジアゲハが一羽、舞い降りました。
花の蜜を吸っているのでしょうか?
マムは・・・チビがなくなる数ヶ月前   
小さな命を失いました。
初めての【孫】と呼べる命でした。
でも、その命は
地上に舞い降りることなく天上に還ってしまったのです。
アオスジアゲハにマムは小さな声で呼びかけます。
『バァバはもう大丈夫だよ。今度は幸せに生まれておいで。
そう、あの子に伝えてね。チョウチョさん♪』
マムの心が届いたかどうか・・・
アオスジアゲハはユラユラと緑の中に消えていきました。

天上では・・・
わすれなぐさのお花畑
いつものようにゴンが嬉しそうにはねています。
クロはうさんくさそうに・・・
チビは・・・温かな安らぎに包まれているのが解ります。
地上で生きてきたことの幸せが天上でもそのままに。
そして・・・神様の部屋(作業場)では
《ゆき》がまぁるくなって眠っています。
《ゆき》の心も穏やかです・・・

どんな命もいつか天上に召されます。
「精一杯咲いて、精一杯生きていこうね、
新しい命・・・」
マムがそっとつぶやきました。

  花花花花花花花花花花花花

勿忘草(わすれなぐさ)・・・
きっと誰の心にもある小さな花。
想い出を慈しみ、懐かしみ、温める・・・
生きていくことは何よりも素晴らしい
どの命も輝いて、明日へと・・・

殆ど宗教を持たない私は【生】も【死】も
自然のままに受け入れられたら・・・
そう願っています。
たったひとつしかない命
たとえ小さな物言わぬ動物たちでも
私の心には限りない愛情と安らぎを与えてくれます。

共に生き、共に死ぬ
こんな当たり前なことでも忘れてしまいそうになる・・・
限られた命がどう燃え尽きたか・・・
せめて、私の心の中だけにでも覚えていよう。
有り難う、沢山の巡り会った命・・・


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