タイトル

新しい家族A

何もかも取っ替えて・・・
新しい家族の出発。
とても立派とは言えないけれどようやく新しい道が見えてきた。
何もない、そう・・・
負からの出発。
けれども、薫子にとってこども達の笑顔は救いだった。
その笑顔の奥でどんな悲しみを隠しているかと思うと
心は痛むけれど、それでもあの「ぼんくら」を
「お父さん♪」と呼んでまとわりついている。
これで良いのかな、お母(姑)さん?!
彼岸の母にソッと訊ねてみる・・・
はるか空の彼方で母が笑ったような気がした・・・

ライン

ようやく話がすべてまとまった時
薫子に小さな手作りの宝石箱が届けられた。
嫁と呼ぶにはまだ少しこだわりがあるけれど
娘とふたりで手作りしたという宝石箱とネックレス&ブレスレット
おもちゃのようなこの贈り物に
恐らくこれから先幻のお嫁さんがふたり(双子の)いるだろうけれど
これだけ心がキュンとなる贈り物はこれから先もないだろう。
正直、身につけることがあるかどうかは?だけれども
なぜか切なくて涙がこぼれそうになった。

実は今年の初め、彼女は心臓の手術を受けた。
最近では心臓と言っても開胸手術はしない。
体に負担をかけないように血管に
カテーテルみたいなのを入れる。
詳しくは聞かなかったけれど
「この手術をしなければ心筋梗塞になる確率が高い」
そう、専門医が言った。
ドーンと落ち込む彼女と慌てる「ぼんくら」
一番不安そうなこども達。   
でも、お姉ちゃんが言った。
「手術せな仕方ないんだろ?!」

やがて手術日が決まりこども達は薫子の家にやってきた。
そう・・・退院する日まで彼らは薫子達と生活することになった。
家出をしたときと同じだけの荷物を持ってやってきた。
「よろしくお願いします!」
ふたつの頭がペコンとお辞儀をした。

弓彦と薫子の何年ぶりかの親業が始まった。
もうずいぶん前に終わったはずのこども達の親。
ここから学校までは車で充分30分はある。
退院まで送迎付き&お弁当
正直、椎間板ヘルニアを持つ薫子には
「まかせて!」と大見得を切るほどの体力はない。
それでも・・・変わってやれる者はいない。
彼女の父親は病人。
それでも70歳近い母に彼女の付き添いを頼んだ。
せめてこども達を見るぐらい・・・

ところが・・・その夜
弟がしくしく泣き出した。
エッ〜!、ホームシック?!
さすがこれには困った。
何度か会ったり、食事をしたことがあるし
小学6年になっていたし、お姉ちゃんもいるし・・・
原因を問うてもいっこうに返事が返らない。
いささか困惑した薫子にお姉ちゃんが一言。
「虫歯」

そう・・・親たちのゴタゴタですっかり忘れられていた虫歯。
こんな時に・・・そう思いながら
薫子はちょっと安心した。
明日は、学校より歯医者へ行かねば・・・

結局この虫歯は奥歯の永久歯を
抜かなければいけない一歩手前まで悪くしていた。
もちろん金銭的事情もあったのだろう。
後に彼女から早くから治療しなければいけない歯を
2年してやれなかったと。
もちろん治療費は弓彦が払った。

しかし、心臓の手術というのは高額だった。
請求書が来て、青ざめた・・・
高額医療で戻ってくるとはいえ
まずは支払わねばならない。
お金がないのを案じていた彼女は手術後
数日で退院した。
それでも40万円を超えていた。
親から融通して貰ったのは15万円。
弓彦は戻ってきたときは返済約束で用立てた。

この手術、ちょっとした医療ミスのようなことがあった。
きっと、専門医は技術を教えていたのだろう。
血管をとおしていたとき多分神経をさわった。
ズッキっと痛みが方に走ったというから・・・
それから術者が変わったらしい。
これ以後彼女は、右肩の痛みにしばらく悩まされることとなった。
それでも、命を取られたようなことはないよと
薫子は言った。
時間はかかるけれど、きっと直るだろう。
それより心臓の手術が無事終了したことが良かった。

本当は他人のこども達・・・
けれども母親のために一生懸命辛抱している。
こんな姿を見たら、誰だって両手をひろげて   
抱きしめたくなる。


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