タイトル

深層心理B

いったい何にこだわっていたんだろう。
他人から見ればたいした問題ではないように思うのに・・・
恐らく、平凡な普通の家庭で育った人には
解ってもらえない、信じてもらえない感情。
「自分は誰か」
そんな確信をいつも暗闇の中で捜していたように思う。
薫子よりもっと複雑な生い立ちもあるだろう・・・
比較的恵まれていると言えばそれまでだけれど
自分の存在があやふやだとなぜか
過去の記憶が靄がかかってどうしても捜し出せない。
そして、前に進めない・・・

ライン

母との関係が同居の年数を増すほど壊れていく。
会話も必要最小限度になる・・・
これではいけないと思って声をかけても
返った返事に、言わなければ良かったと思う・・・
いったん壊れた関係の修復は難しい・・・
誰が壊したのでもない。
砂上の楼のごとく年月が土台から流していく。

もしかしたら・・・
こどもを育てることは出来ても
「親」になることは難しいのかもしれない。
よく考えれば、本当に手がかかるのは
3歳児ぐらいまで。
後は、かなり暴言的な言い方をすれば
食事さえ与えればこども達は勝手に育つ。

薫子には「母の味」の記憶がない・・・
食べる為に働く、それで精一杯の母。
もしそれだけなら、記憶のどこかに懐かしい味がある。   
けれども、いくら捜してもそれは霧の中。
料理がうまいと自負していた母
でも・・・捜しても、捜してもそれには辿り着かない。

幼い日かすかに台所に立った母の記憶がある。
でも、それは後ろ姿だけで正面の記憶がない・・・
父より後で寝て、父の後から起きる。
祖父が食事の支度をしていた。
全くの分業家族。
母は「母」ではなく薫子にとって飼い主?!

今、母は一緒に連れてきた猫たちを家族として大切にしている。
間違いなく、弓彦・薫子・こども達より大切な存在。
一日中猫たちに話しかけている。
「賢いなぁ・・・、一番おまえが心配してくれる。」
それは、いったい何なのだろう・・・
淋しさの裏返し?
本当はそうだと思いたいけれど
もしかしたら、猫たちは薫子の代替?
母にとって薫子はペットの延長?!
そんなとんでもない発想に陥ってしまう。

母との会話で残っているのは
薫子を育てるのに苦労したこと
姑がきつかったこと
父で苦労したこと
言わば愚痴ばかり・・・
そんなことをずっと聞かせられてきた。
でも、祖母も父も薫子には愛された思い出がある。

母は?   
そう・・・心をぶつけ合った愛情がない。
いつの間にか母の前では良い子を演じ
取り繕っていた薫子。
母は、母になりきれなかった?   
きっと母の前に自分があった。
今そんな気がする。

母のタンスの上の段ボールの箱に
<ラブレター>と書かれた箱がある。
開けたことはないけれど、
あなたは今でもそんなものが大切なのね。
自分が若かった頃の追憶・・・


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