タイトル

深層心理

いつの頃から母を避け始めたのだろう。
なぜかその原因もみんなどこかにしまってしまった?
養女と言うことにこだわったわけではない。
現に、父は養父以外にいないと今でも思う。
気持ちの上でどこかに
何かを封印したような気がする・・・
なんだったんだろう。
それもずっと幼い日に・・・

ライン

物心付く頃から母は薫子にいつも言っていた。
「おまはんを育てるのには苦労した。
日赤で、行かなかったのは産婦人科ぐらい。」
耳にたこができるぐらい聞かされた。
確かに、眼科・小児科には縁の切れない虚弱児だった。
けれど・・・これは薫子だけでは無かっただろう。
当時のこども達はよほどの家庭以外
ほとんどが栄養失調かもしれない。
卵が何よりごちそうだった時代。

決して、粗末に扱われたわけではない。
大切に育てられた。
それは十二分に解っているのに
心のどこかにすきま風が通り過ぎていく。
薫子は自分が母になってどこかが違うことに気付いてはいた。
母はきっと、まず自分、そして薫子だったのでは?!
母親の無償の愛
きっとこれはない・・・

そして小学一年の爪切り事件の時から
薫子の心にはきっと影を落とし続けてきたのだ。   
いったんは封印しながらもずっと重くのしかかっていた。
世間体?それなのだろうか?
もし、本当の親子になれていたら・・・
今、こんな気持ちはきっと無い。
どこかに母と薫子の心のすれ違いがある・・・
そして、薫子のこども達でさえ
この母を避け始めた・・・

ライン

初めて中国残留孤児が日本に戻ってきた日
薫子の心は複雑だった。

その上ある某有名脚本家の
テレビドラマにも納得がいかなかった。
境遇は薫子自身によく似たドラマ。
その展開にあっけにとられた。
何も解っていないよ・・・
そんなに簡単に割り切れるもんですか。
いったい何を見たの?!
そう声を上げて叫びたかった。

ただ、残留孤児にしてもドラマの主人公にしても
ひとつだけ言えることは、
自分ではどうすることも出来なかった運命。
ほんの少し歯車がずれると
瞬く間に違う世界になってしまったこと。

そして母は今、なぜが子守唄をいつも口ずさむ・・・


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