タイトル

赤い糸

運命の赤い糸   
出会って、よじれてぷつんと切れるか・・・
細い糸が絡まって一本の太い糸に縄なえるか・・・
それは本人さえ解らない、遠い道程

ライン

運命と言うことがあるのかどうかは別として
薫子は弓彦と出会った事は何にも増して感謝している。
けれどもだからといって、理想の夫婦を演じてきたわけでもない。
ふたを開ければ、どこにでもある普通の夫婦。
「愛している」などとお互い金輪際言ったことはない。
いつか書いたけれども、お互いの人生の戦士・同士の様相・・・
それでも、もし来世があるのなら
薫子は弓彦と巡り会いたいと思う・・・

他人が寄り集まった家族・・・
そんな環境の中で薫子は本当の家族・理想の家庭を夢見ていた。
たとえば良妻賢母。
そんなこと薫子には出来るはずないのに・・・
心のキャンパスにはそんな絵が浮かび上がっていた。
パーフェクトな嫁・妻・母
できもしない事を願ってもどこかでひずみができる。
そして化けの皮もはげてくる。
結果的に子育ては「ぼんくら」がかなり脱線した。

結婚式まではきっと誰でも
この先が暗闇だなんって誰も思わないだろう。
けれども「一寸先は闇」というのが本当かも知れない。
なにも望んで災いを呼ぶわけではないけれど
結婚後の人生なんって何が起こるか解らない。
忍耐と協調、おまけに尊重を加えて貰えば言うことはない。
この日から長い旅路が始まるのであって
あのセレモニーは最後の饗宴かも知れない。   
これから先何があるかそんなこと少しも心配していない、
王子様とお姫様・・・
お仕着せの衣装の中でつかの間の幸せ。
気付いたときは泥沼・・・
でも、お互い手を放さなければ
いつもとなりでいる、空気のような存在。

最近「熟年離婚」という言葉を聞く。
何とももったいないような・・・
夫の定年退職を待って   
半分の退職金で残りの人生を自由に生きる。
本当だろうか?
それで幸せ?
何とも納得のいかない薫子だった。
たとえ、どこかの歯車が違っていても
その年まで何とか一緒に頑張ってきたのに
片車輪になるなんって・・・

確かに薫子は弓彦にたいして愛憎劇はなかった。
ただ、弓彦も一人の男性には違いない。
結婚後何も遊ばないまじめだけの夫ではない。
人並みに飲む・打つ・買うも多少は経験したことだろう。
それをあえて問いつめようとは思わない。
嵐のような日々が続いた時、ほんの一時
夢を見たとて、それが責められようか?!
また、この小さな小舟に戻って家族を精一杯守った弓彦。   
淡い瞬時の夢・・・それもまた良いではないか。
事が解った妻というわけではない。
ただ・・・信頼が地下水から湧き出るように
ふたりの心の中にはあると薫子は信じている。

もし万が一、薫子が弓彦より先に逝くことがあるとすれば
薫子は「後添え」が出来てもかまわない。
そう息子達に言ってある・・・
弓彦がそれで幸せな老後が送れるのなら   
それに越したことはない。
薫子には相手を縛るような激しい愛はない。
そう・・・簡単な言葉で言えば
『優しい愛』かも知れない。
これだけの長い道のりを歩いてきたんだもの
もう良いよね、羽のような優しい温かさがあっても・・・


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