タイトル

生き方

「確執」・・・
養母と薫子は確執なのだろうか?
お互いが自分の主張を言い張って融合がない?
もし、養母が逝ったとして
彼女は幸せな生涯だったと思うだろうか?!
否、それはまずないと思う。
けれども、人の幸せ基準は人によって違うだろう。
長く生きたとか、短命だったと言うこととはまた違うように思う。
自分の思い通りの人生を歩める人はほんの一握り。
大多数の人が、思わぬ方向に進みうろたえるのでは。

 ライン

人生の曲がり角を曲がってしまった薫子。
遅かれ早かれこの母の終焉は訪れる。
きっと彼女は薫子とますます心を
隔たせたまま別れることとなるだろう・・・
もしかしたら・・・その時涙さえ見せぬ娘?!
まだ元気に生きている母を遠目に見ながら
そんな愚かしいことを考える。

恐らく、養母が母であった期間は短い。
そして、彼女が気付かないぐらい早く
彼女は母を捨てた・・・
それが彼女の理念だったのか、知るよしもないが。
つまり、彼女は「母・妻・嫁」そのどれも選択しなかった。
言い方を変えれば、ひとりの「女」として
自由な生き方をした人、あるいはしたかった人かも知れない。
もしかしたら、これからの時代を生き抜くのなら
飛んでいる女性を演じられたかも知れない。

<我>が強い・・・   
母が薫子を批判するときによく使う言葉。
しかし、これはそのまま自分のことであることを
齢86歳の母は気付いていない。
恐らく母の半生に妥協はない。
自分を殺して、何かに立ち向かうと言うことは
恐らくなかったのではないだろうか?
もちろん「自己」があっての「家族」には違いないが。

時折、便りのある従姉妹達。
言わば本当の従姉妹ではない。
母方の従姉妹・・・
何年ぶりかの電話口の彼女から思わぬ話が漏れる・・・
「叔母ちゃんね、いつも不平不満言ってたわ・・・」
ふと、薫子の知らない過去の母の顔を教えてくれた。
「叔父さんのこと、お姑さんのこといつも愚痴ってた。」
もう半世紀も前の話をいきいきと話す。
「その時私もまだこどもだったけれど、
いつもだと良い気はしないよね。」
堰を切ったように、話す若き日の母の姿。
薫子の知らない母が浮かび上がる。
母は・・・自己中心主義。

だからといって、今更母が変わるわけでもない。
唯一変わるとすれば、薫子のこれからの生き方。
幼い日、『母のようにはならない』   
そう誓ったことを忘れてはいない。
理由が何であったか今となってはわからないが・・・
母の二の舞だけは演じたくない。

そう言えば、母自身の口からこんな話を聞いたことがある。
さかなを食べない母、正確に言うと高級魚しか食べない。
(鯛・ヒラメ・ウナギ・ニシン・エビ・イカ・サザエ等)
グチは食べるという母の為、姑はグチを料理した。
ところが母の「グチ」と姑の「グチ」はさかなが違った。
京都生まれの母の「グチ」とは白身の高級魚。
四国の田舎育ちの姑の「グチ」とは全くの別物だった。
その時母は、違うと言って手を付けなかったと・・・   
当然姑の機嫌は悪くなる。
その時、父が助け船を出さなかったと母は悔やんだ。

けれど、これがもし薫子ならどうしただろう・・・
恐らく食べたと思う。
薫子は、誰に教えられたのでもない。
供された物は、たとえ口に合わなくても食べる・・・なるべく。
そう心に刻んでいた。
人が料理するとき、まずい物を作ろうと思ってはしない。
誰かに食べて貰おう・・・そう念じて作るはずだから
その気持ちだけは頂きたい。
こども達にもそれは言い続けた。
手も付けず捨てる、一番失礼な事と。

当然姑はこのことを舅に話しただろう。
恐らく小生意気な小娘、そう取られても致し方ないと思う。
母の言うように舅・姑がきつかったのではなく
母が高慢なだけかも知れない。

薫子にとっての姑、弓彦の母
彼女とは20年の歳月を通してやっと親子になった。
けれども、母とは・・・一度はきっと交差した道が
今果てしなく離れていく。

平然と母は薫子に言う。
「私は漬物があればおかずはいらんのよ」
そう、何度も・・・
でも、それは好き嫌いの激しい母に別メニューで
食事の準備をしている薫子をいらだたせる。
『お母さん、あなたは自分は贅沢じゃないと強調しているつもりでも
私には、あんたの作るのより
漬物の方がよいと言っているようなものよ・・・    
言葉のひとつが、相手にどう伝わるか考えたことあるの?』
確かに、母の不用意な言葉に薫子は泣かされた。
もちろん母は気付いてはいないが・・・   
弓彦と母の間でどれだけの涙を流したか母は知らない。

ただ・・・この母を批判しただけでは薫子は単なる恩知らず。
本気で母のようにならないと思うなら・・・
やはり、この母の何かを乗り越えなくてはならない。
ほとんど呪縛のような何か・・・
いったいそれは何?!


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