タイトル

甘えると言うこと

こどもは何も考えず、純粋に親に甘える。
わがままとも言う。
この動作は自然界にももちろん通用する。
親に甘えたり、祖父母に甘えたり
あるいは兄弟姉妹に。
薫子は・・・
あの日からピッタリその部屋を締め切った。
『薫子ちゃんってもらい子ってほんま?!』
そう訊ねられた日から・・・

ライン

弓彦と結婚してから数年たったある日
ふと弓彦が言った。
「僕には甘えてもいいのに・・・」
あるいは、それは弓彦にとって唯一の不満だったのかも。
薫子は淋しく笑った。

いつの間にか、   
天真爛漫に甘える・ねだるという行為を忘れてしまった。
今なお、自分のことは最後にしか考えられない。
小さな自分の殻の中で
必死に何かを守ろうとしている幼い薫子。
守って欲しいときに大人達は背を向けた。
だから・・・
自分を守るのは自分しかいない。
いつか、そう・・・
幼いあの日に薫子は悟った。   
できるだけ良い子で、迷惑をかけない子。
お手伝いもいっぱいしよう。
お勉強も少し・・・
今あの日の自分に巡り会えたら
薫子は間違いなく
抱きしめて大泣きするだろう・・・
頑張ったね、もう良いんだよって・・・

今思えば・・・
もし薫子のこども達なら10歳足らずのこどもを
客商売の店に立たさなかったと思う。
養父母の店は水商売・・・
もちろんお酒を売ったりするわけではないけれど
小さな大衆食堂兼喫茶店のはしりのような感じだった。
薫子はそんなときから高校卒業まで手伝った。
当たり前と言えば、それまでだけれど
人の目には違って映っていたかも知れない。

不幸せではなかったけれど何かが違っていた子供時代。
全くの寄せ集め家族が精一杯家族らしく振る舞っていた。
今でも身の回りのこと、たとえば衣服とか
薫子は決して良い物は持っていない。
たいがいの場合バーゲンの残り物
至って格安のものばかり。
だから、ある意味でよそ行きと称するものは全くない。
幾ら弓彦に「買えよ!」と勧められても
三千円以上の衣服はとても手が出ない。
身に付いた貧乏性?!

母は数えるぐらいしかなくなった毛髪でも
月に一度は美容院に足を運んでいる。
薫子は?
年に三度ほどカットだけに行く。
別に始末しているわけではない。
ただ、自分のことは最低限度
そう言う性分が身に付いた。

もしかしたら・・・
薫子は今でも弓彦にでさえ
本当の自分を見せていないのだろうか?!
裸の心を・・・


HOME NEXT BACK TOP