タイトル

心のひだ

人はいくつの心のひだを持っているのだろう
書き連ねても・・・
書き連ねても・・・
どこかにはき出せない何かが残っている・・・
それは何だろう
見つめてはいるけれど、あえて見ない振りをしている?!
自分に忠実であれと思ってはいても
心の深淵にはよどみを持った何かが残っている。
湖の底へそこへと潜って手をさしのべるのだけれども・・・

あえて通り過ごしてきたことがある。
それは・・・
自分一人がはみ出してしまった「兄弟姉妹」の輪。
過去を持たない薫子には幾ら兄弟と言われても
頭では理解しても体(心)は入っていかれない。

あの日事実がわかってしばらくして
長姉と次兄から手紙が届いた
長姉は姉らしく優しく書かれてあった。
ただ、だからといって溝が埋まるわけではない・・・

次兄はそれから何度となく便りをよこし
薫子が結婚するまで文通らしきものが続いた。
それは恐らく幼くして里子に出された
薫子に対する哀憐(?)の様な感情
素直に甘えてはいたが、心底「お兄ちゃん!」
そう呼べない淋しさが今もある・・・

長兄は・・・   
子供時代、年が離れすぎていたのか
その存在さえ気付かなかった。
ただ、すべてが白日の下に照らされた日から
彼は彼のできる限りの事を薫子に与えてくれた。
金銭的援助は別としても
恐らく沢山の兄弟の長兄として   
責任感を一身に背負っているのだろう。
今でも、秋になると30KGの米が何表か届けられる。
それは薫子が結婚してからずっとのこと。

泥んこになって遊んだ記憶も、喧嘩をした記憶もない。
何時行っても、薫子はお客だった。
きっとそれは今も・・・
どんなにお互いが努力したとしても
ともに過ごしたことのない兄弟姉妹は
心のつながりが希薄。
仕方のないことだけれども
兄弟で助け合う・・・それは薫子には幻。

ライン

何時だったか、一番末っ子に訊ねたことがあった。
彼一人母親が違う・・・
そう、薫子が里子に出されて何年後かに
新しい母が来た。
その息子「知治」
薫子にとっては、たった一人の弟だけれども
彼との関係も薫子は枠の外。

実父も逝き、その後妻も逝ったある日。
何気なく薫子は「知治」にポツンと訊ねた。
「お互い、何かつかえるものがあるよね・・・」
ところが、「知治」は薫子の予期せぬ答えを返した。
「僕、別に何も思っていないよ。
兄貴達大切にしてくれたし、兄弟だから・・・」
あぁ〜、今更ながら薫子は思い知った。
幾ら母親が違っても、彼は生まれたときから兄弟として
家族として受け入れられていた。
そして、自分は?!
どういう人生の流転にせよ、やはり薫子は
兄弟の縁からははずれていた。

いつか弓彦がこう言った。
「お父さん(養父)も逝ったことだし
兄貴と正式な(?)親戚づきあいせないかんな。」と・・・
薫子は首をかしげる。
これ以上の何を求めるの?!
もちろん理屈では解っているけれど
薫子の心の奥での兄弟姉妹というのは
過去の戸籍上、つまり紙切れ一枚のことにしか過ぎない。
<思い出>を持たないと言うことはそういうことなのだ。


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