タイトル

ノラの場合

薫子の家には驚くほど犬と猫がいる。
今現在猫13匹、犬4匹。
どちらも常識の範囲を超えている。
それも今はやりの血統書付きの優等生ではない。
もし、薫子達に巡り会わなかったら
車に轢かれていたか、餓死
あるいは保健所送りになっていた。
ほとんどが捨て猫・捨て犬の類。
ただ、ノラだけはちょっと事情が違う。

野良猫には違いないのだけれど
彼女は野良として逞しく生きるすべを知っていた。
恐らく、寝床もあっただろうし
テリトリーもあったと思う。
けれども、彼女はふたつの理由から
とんでもない状況に追い込まれた。

ライン

そのひとつ
それは母の餌付け。
もちろんそれはノラにとっては望むところなのだが・・・
母は、自分の飼い猫だけじゃなく
薫子の家に来てしばらくすると
「散歩」と称してはポケットにお菓子を包み込んで
ご近所の飼い犬や野良猫に餌をやるようになった。
さすが、ご近所の庭に入ってまで餌をやる行為は
薫子は御免被りたいと母に言った。
「ほなって、私が行くと喜ぶのに・・・」
そうは母不満そうに言った。   
「餌をやれば、別にあなたでなくてもなつくわ。
いったい番犬をなつかして何をするつもり?
そう思われても仕方ないでしょう?!」

母にはきつい薫子の言葉かもしれない。
けれども、どこの世界に誰ともわからない人から
飼い犬に餌を貰って喜ぶだろう。
はっきり言って、薫子ならお断りだ。
飼っている以上、食べ物管理は飼い主がするもの。

最初にノラに出会った頃
彼女は普通(?)の野良猫だった。
処世術を心得ていて、餌をくれそうな人を見分ける。
もらえそうと解ると、鳴きながらすり寄ってくる。
確かに、元々嫌いでない者には餌をやっても・・・
と、思わす野良猫だった。

弓彦と薫子、野良猫(犬)に対する決まり事があった。
それはむやみやたらに餌をやらないこと。
「責任の持てない行為はしない」と言うことだった。
もし野良猫(犬)に餌をを一度でもやったら   
その責任は取ること・・・

このことは多くの老人が理解できないことが多い。
母がこの野良に餌をやり出したとき
薫子は餌をやらないようにと言った。
母の返事は
「私は戦時中、食べ物がない苦しさを知っとるから・・・」
そう言って、隠れてやるようになった。
でも、それは違うのよ。

野良猫(犬)に安易に餌をやると
彼らは餌付けされた状態と同じになってしまう。
甘えれば食べられることを知った野良猫(犬)
これはもう、半飼い猫(犬)状態。
栄養状態も良くなれば、子供も生まれる。
何よりも、ご近所に糞尿のご迷惑がかかる。
母は、こんな事一度も考えたことがない。
一匹を救ったつもりでも
不幸な猫(犬)が何匹も生まれる。
それこそねずみ算式に。

母のやり方は、自分勝手な自己満足でしかない。
本当の意味で彼らを少しも助けていないのだから・・・

 

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