タイトル

Nora(W)

アタイが《トーチとカーチ》のお家に戻って
カーチは大忙しだったって。
アタイは何も知らなかったんだけれど
まず、シッポを治すこと。
・・・でも、切断だって事解っていたみたい。
それと・・・避妊。
このことはアタイはつい最近まで知らなかった。
痛い思いは一度で良いって
お医者様にカーチが頼み込んだ。

ライン

さすが、野良猫の引き取った数の多いカーチ
どうやらお医者様と交渉したようだった。
すでに飼い猫になった全員の避妊を終えていた。
《トーチもカーチ》も猫を引き取る前提は避妊だった。
自然の摂理には叛するけれど
救うにはこの方法しかないって・・・

お医者様に見せる前からアタイのシッポは
もう元には戻らないとカーチは覚悟していたの。
そしてアタイを飼い猫にするには避妊が必要なことも。
アタイは避妊ってなんのことか解らなかったけれど・・・

秋になると県獣医師会から避妊に対して
1頭に付き5千円の補助が出るらしい。
《トーチとカーチ》の引き取った猫たちは
全員その補助を受けたんだって。
急いでアタイの分をカーチは投函した。
でも、結果は1ヶ月先   
それなのに、カーチはお医者様に
「いったんは支払うけれど、もし当たったら返して?!」って
さすが・・・カーチ
普通じゃ言えないよ。
お得意様(?)だったのか、お医者様は快い返事。
・・・と言うことは、アタイの手術が決定?!

ライン

《トーチとカーチ》のお家に戻って数日後
アタイは夜から、水も餌ものけられちゃった。
でも、別に何ともなかった。
だって、今までに比べたら・・・
ところが・・・   
朝になってもなんにもくれない・・どころか
ホラッ! 例のバスケット
あれにアタイを入れてまた車でどっかに連れて行くの!!
もうアタイはパニック状態
エエッ〜!!って感じ。

今度は山の中じゃなくてとても綺麗なお家
でも、アタイはガタガタ震えてた・・・
また・・・捨てられるんだって

待合室で受付をしていたとき
「え〜っと、猫ちゃんの名前は?」って
誰かが聞いていた。
カーチがアタイを振り向くと「Nora!」って思わず叫んだ。
「えっ?! ノラ??」
若い事務員さんが笑いながらカルテを書いていた。

その時からアタイの名前は【Nora】になった♪

その日、カーチは「必ず連れて帰るからね」
そうアタイに言って診察台の上に載せた。
小さな注射器がアタイの体を刺すと
アタイの目は開いているのに・・・
夢の中に落ちた・・・

どのくらい時間が過ぎたのか。
薄暗いゲージの中で目を覚ましたアタイは
全身で痛みは感じるんだけれど
体が自由に動けない。
いったいどうなったんだろう?!
恐怖か寒さか解らないけれど体がガタガタ震えた。

辺りを見回すと、
ボヤッとした空間から同じようなゲージが見えてきた。
アタイと同じように何かがうずくまっている。
猫? それもアタイより小さい・・・
『大丈夫?!』って声をかけようと思っても
声にならなかった・・・

それからまた時間が流れた。
『アッ! お外でカーチの声が聞こえる!!』
カーチの声がたまらなく懐かしかった。
ドアが開く・・・
そこにカーチがいた♪
アタイは声にならない声を上げた。
「・・・・」

「迎えに来たよ、一緒に帰ろう!」
そう言ってまたバスケットの中にアタイを入れたの。
でも、もうアタイは怖くなかった。
『お家に帰れる・・・』
ホッと安心して急に涙があふれ出た。


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