タイトル

Nora(V)

アタイが《トーチとカーチ》の所へ戻る決心をした頃
カーチは後悔で胸が張り裂けそうだったって・・・
後で、アタイは聞いたの。
なんだかとっても嬉しかった・・・
きっと、アタイが戻りたかった訳は
カーチの心の中が読めたからかも知れない。
トーチもね、可哀想なことをしたって・・・
本当はね、明くる日
《トーチとカーチ》はアタイを迎えに来たんだって   
何度も何度も、アタイの名前を呼んだって・・・
でもさぁ、その頃アタイまだ【Nora】じゃなかったんだよ。

ライン

山道を少しずつ下っていった。
車の中、それもバスケットの中だったから
外の景色なんって全然見ていないし
本当はどっちの方向に向いていけばいいのか解らなかったの。
ただ、カーチの〈心〉が何となく呼んでいるような気がしたから・・・

何日野宿して、何日遊んだか解らない時間が過ぎた。
でも、アタイは同じ所にはいなかったのよ。
毎日少しずつ、少しずつ、
カーチに近づいていった様な気がしたかな。
ある日フワッ〜と風がね、《トーチとカーチ》の匂いを運んできた。
アタイは嬉しくなって駈けだしたわ♪
・・・でも、それは残り香だった。
だって、一緒に犬の匂いもしたから。
『散歩にここまで来てるんだ!
この匂いを辿っていけば《トーチとカーチ》に会える!!』   
俄然、嬉しくなったアタイはトントン山を下っていったの。

しばらくすると・・・
あぁぁ〜〜、やっと、やっと・・・
見覚えのある景色に巡り会った・・・
耳を澄ますと《トーチとカーチ》の声が聞こえる!

「あの猫、どうなっただろうねぇ・・・」
「生きていてくれると良いね・・・」

たまらなくなったアタイはとうとう声を上げた!
「にゃ〜ん・・・」
するとカーチが
「おとうさん、あの猫の声!!」って大声で叫んだ。
「ま・まさか・・・」
そう言うトーチの声が聞こえたとき
アタイはゆっくり草むらから顔を出したの。

カーチは見る見る目を真っ赤にして   
アタイを抱きしめた・・・
「良くまぁ無事で・・・本当に戻ってきたの?!」
間違いなく、シッポのただれたアタイは
トーチの目にも奇跡のように映ったらしい。
「あれから何日歩いてきた?!」
そう訊ねたトーチにカーチが答えた。
「三週間!」

三週間という時間がどのぐらいなのか
アタイには良く解らないけれど・・・
トーチは「もうどこへも行かなくて良いよ
明日病院へ連れて行ってやれよ。」って・・

ライン

その夜、アタイは車庫のひと隅で小さな箱を貰った。
その先には二匹の犬がいたけれどちっとも怖くなかった。
ただ、首の小さなりぼんの首輪と
鎖で繋がれていたのがちょっと・・・
トイレ用の砂場も作ってくれて、アタイはちゃんと使えたの。
ん? それに・・・
トーチが言っていた病院って言うのが気になるんだけれど・・
まぁいいか、今日はもうお休みなさい・・・


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