タイトル

Nora(U)

いつの間にか、自分が【野良猫】であることさえ
忘れるような時間が通り過ぎたわ・・・
やがて・・・一軒の空き家の縁の下で
アタイは赤ちゃん猫を三匹産んだ。
ちゃんとお乳も出たし、
食べ物をくれるお家を渡り歩いてた。
何もかも初めてだったけれど
何とかお母さんは出来ていたと思うよ。

ライン

ある日《トートとカーチ》のお家の縁側に
そっと入ってアタイはうたた寝していたの。
こっそり、飼い猫気分?!
でも、カーチはそれを見つけると
「だめよ、おまえは家のニャンコじゃないから・・・」
そう、すまなさそうに言ってアタイを追い出した。   
アタイが、一番飼い猫に憧れていた時期だよ。

所がね、ある日を境に
アタイは天と地ほどの違いを経験することになったの。
その日からどこへ行っても
「シィ、シィ!」って追われる羽目になった・・・

それは突然のことで
アタイ自身も良く思い出せない出来事なんだけれど。
多分、高校生の乗ったミニバイクだったと思う。
道の隅っこで何かに夢中になっていたアタイは
走ってきたミニバイクから逃げ切れなかった!
まるでアタイをめがけてきたように走ってきたミニバイク   
アッ!というまにアタイのシッポを轢いていった。
しかも二人乗りしていた少年は
ゲラゲラ笑ってアタイを振り返りながら通り過ぎた。

ほんの一瞬のアタイの油断?!
でも、まさか・・・
わざと・・・アタイを狙ってくるなんって思いもしなかった。
シッポの痛みにハッと気が付いて
見てみると半分が真っ赤にただれているの・・・
ヒリヒリ痛みが全身を走るし
いつもならナメナメすれば治る傷がいつまでたっても治らない。
逆にジクジクしてきちゃって・・・
アタイはもうどうすればよいのかわかんなくなっちゃった・・・

今までアタイに食べ物をくれていた人たちが
アタイのシッポを見るなり・・・
「汚い猫ね、あっちへお行き!シィ、シィ!!」って
どこへ行っても追っ払われるようになった。
ひどいときは石を投げつけられるんだよ。
その日からお腹が満腹なんって日は一度もなかったの。

それでも《トーチとカーチ》は以前と変わらなくくれた。
お薬も塗ってくれたけれど
アタイがナメナメするからダメなんだって・・・

ライン

それからしばらくたって・・・
カーチがものすごく辛そうな顔をしてアタイに言った・・・
「飼ってもあげられないし、この辺じゃ虐められるし
他の場所にお行き・・・」

カーチは小さなバスケットにアタイを入れると
カーチの息子になにか言ってバスケットごと車に積んだ。
車で20分ほど走って、小さな山をふた山越えていた 。
車から降ろされたアタイはカーチの息子から
いつもより多めの食べ物を貰った。
・・でも、そこにアタイは置き去りにされた。

ただ、ここは山の中だけれど食べ物がない訳じゃなかった。
この付近の唯一の観光地
山の中に地元特有の《うどん屋さん》が軒を連ねていた。
だから・・・うまくいけば残飯はあったの。   
もちろん、優先的にくれるというわけじゃないよ。
野良の本領(?)発揮しなかったら食べられない。

2〜3日はそこでウロウロしていたかも知れない。
でも・・・アタイは無性に《トーチとカーチ》に会いたくなった!!
本当は捨てられたんだけれど、なぜか会いたくなった。

とうとうアタイは意を決したの。
《トーチとカーチ》の所へ戻ろうって♪


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