タイトル

Nora([)

初めての脱走から・・・数ヶ月
お外に出るとアタイの体臭は少し変わるのか
ハッちゃんでさえ「シャーッ」と
アタイに牙をむいてくる・・・
お外って良いのに・・・
ここのみんなは知らないんだ。
それに、《トーチとカーチ》も用心深くなって
窓を開けるときは必ず網戸をロックするようになった。
でも・・・時折忘れている(笑)

ライン

しばらくはアタイはおとなしくしていたの。
まぁね、カーチの言う「猫密度」の高ささえ気しなかったら
食事と寝床は今までと比べれば最高だったし
ハッチャン以外にもお友達になることも出来たから。
人間界では「袖スリ会うも多生の縁」って言うらしい。
でも、秋風が吹き始めるとアタイは無性に恋しくなった。
毎日、毎日、窓辺からお外を眺めていた・・・

今度はアタイなりに念入りに計画を練った・・・
本当?! っていうかも知れないけれど
そうだよ、だって・・・
カーチに「詫び状」まで届けたんだから

[Noraの詫び状]

『トーチ、カーチ 今までアリガト。
アタイのシッポも治してくれてアリガト。
アタイはずっとお家の猫が羨ましかった・・・
まさかアタイが飼い猫になるなんって
夢にも思わなかったんだよ。

でも・・・やっぱり
アタイはお外が恋しい   
お外を走りたい
お腹がすいてどうしようもないときもあるけれど。
トーチが優しくナデナデしてくれたり
カーチの暖かい膝の上
アタイ、本当に嬉しかった。

今度はね、カーチに餌のおねだりもしないつもり
アタイ・・・自由な猫でいたい。
でも、いつもトーチとカーチを見ているからね。
忘れないからね。
ホントにアリガト。。。』

ライン

それをカーチの心に届けると
アタイはもう冬将軍がまもなくやってくる朝
鍵のかかっていなかった窓をお手々でカキカキして
とうとう飛び降りたの。
ただ・・・アタイの唯一の誤算は“寒さ”だった。

アタイは《トーチとカーチ》の家の前の草むらで一晩すごしたの。
ふっと見上げた窓辺にカーチの影が・・・
カーチ、肩をふるわせて泣いていた。
アタイの[詫び状]読んだんだ。
なんだかアタイも切なくなって涙がこぼれた。

それでもアタイはカーチが置いてくれる餌には近づかなかった。
カーチの目にアタイは時折はいるけれど
カーチからは距離を置いていたの。
ところが思いもしなかった事が解った・・・

アタイが《トーチとカーチ》に引き取られていた間に
アタイは、アタイの縄張りをすっかりなくしていた。
野良の世界の厳しさを思い知ったアタイ・・・
おっさん猫もつい先日車にはねられて死んだ。
その上、昨日から・・・氷雨。
アタイは寒くてぶるぶる震えてた・・・

とうとうアタイは《トーチとカーチ》のお家の
戸袋の上で一夜を明かした。
明け方、ウトウトしていたら・・・
トーチの大きな手がアタイを包んだ。
「バカだなぁ、こんなに冷えちゃって」
そう言うと大切そうに懐に包んで
温めてくれた・・・

このとき、アタイはもう観念(?)したの。
お外が恋しくても
お外が走りたくても
もう二度と飛び降りるのはよそう・・・って。
だって・・・トーチの懐はとっても暖かだったんだもん。


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