タイトル

久史(ひさし)

初恋とまでは行かなくても
心にかすかな灯火が今も残っている。
そのくせ、ほとんど記憶がない・・・
写真のワタシの向かって左隣の少年、久史。

彼は、小学生在学中に一度転校して
また戻ってきた。
そして・・・3クラスあるのに
ワタシのクラスとまた一緒になった。

転校しても、帰ってきても幼なじみはありがたい。
昨日までの友達と全く同じだった。
元々37〜8人の3クラス。
6年間一緒にならないというのは希で
誰かとは一緒になっている。
それでも少しずつ遊びのグループが出来てくる。
放課後の運動場
適当に遊びの輪ができていた。

久史はどちらかというと運動が得意な男の子だった。
ロッパ君(古川という名字)やボウ(坊ちゃんのあだ名)と
砂場の高い鉄棒で大回転に挑戦したりしていた。
全く腕力のないワタシは鉄棒はからきしだめだけれど
見るのは大好きだった。

ロッパ君が落ちた!
スゥ〜ッと血の気が引いた。
ボウや久史が駆け寄る・・・
大回転から飛び降りる着地の時、手が滑った。
砂場で倒れたままのロッパ君。
やっと、ロッパ君が起きあがった。
鼻血がスーッと流れた。
片手で照れくさそうにぬぐうと『にっ』と笑った。

緊張で張りつめていた空気が一瞬にほころんだ。
「心配した〜〜ぁ。」久史の声にみんながうなずいた。

ライン

いつの冬だったか、ドカ雪が降った日があった。
暖かい四国では雪がちらつくことはあっても
積雪と言うことは少ない。
何年に1度・・・
しかもその年は、校庭中真っ白な雪に覆われた。
そんな日は午前中は雪遊びの時間になる。
滅多にお目にかかれない、雪合戦や雪だるま作り。

どうして久史と私がそこにいたか思い出せないけれど
運動場じゃなく、幼稚園の園庭の隣の田圃で
せっせと雪だるまを作った。
真っ白な雪だるまのはずが
いつの間にか土が見え始めて汚れてきた。
ほっぺと手を真っ赤にしながら
幼いふたりは物も言わずただ黙々と・・・

久史の思い出の中にもあの光景は残っているだろうか?!

ライン

そう言えば・・・
それからずっと後のあのとき
4年生の体育の時間   
担任がワタシに「ボールをやっても下手だから。」と言ったとき
ワタシが投げたボールの先には久史がいた。
「当たった〜!」そう笑顔でコートの外に出た久史。
もしかしたら・・・
担任からワタシをかばった?!

久史はまた転校した。
卒業アルバムに彼の写真はない。
でも、幼い彼の顔はワタシの心に今もくっきり残る。
有り難う、久史。
やっと、思い出したね・・・


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