タイトル

奈津江(なつえ)

ワタシは奈津江ちゃんのことあまり好きではなかった・・・
でも、どういう訳か心に残っている。
今みたいな大きな家ではないけれど
社宅のような平屋の家が沢山並んでいた、学校の近く。
もう少し東に行くと漁師町になる。

奈津江ちゃんは、若いお父さん・お母さんの三人家族。
お母さんはおしゃれで美人。
その上、教育熱心。
奈津江ちゃんはそのお母さんのコピーのごとく
美人で、勉強もよくできた・・・と思う。
一度、奈津江ちゃんちに遊びに行ったけれど
お母さんはあまり良い顔しなかった。
しばらくすると「お勉強があるから。」と
帰ることを促された。

あの頃の奈津江ちゃんは、
もしかしたらよい子を演じていたのかもしれない。
決して、どろんこ遊びや喧嘩はしなかった。
いつもどちらかというとツンとすまして
上から眺めていた。
運動は少し苦手・・・
奈津江ちゃんの友達はお母さんが選んだ。
お勉強の出来る子と、奈津江ちゃんはおそろいの服を着ていた。

ライン

あの日の奈津江ちゃんに聞かないと解らないけれど・・・
奈津江ちゃんは本当はみんなと
どろんこ遊びも喧嘩もしたかったんじゃないかなと思う。
髪の毛はいつも綺麗にパーマがかけられていたけれど
そんなこと少しも嬉しくなかったんじゃないかな?!
お洋服が汚れても、かぎ裂きになっても
そんなこと気にしないで遊びたかったんじゃないかと。

6年生の時、成績のよい子が2〜3人
附属中学の試験を受けるため補習を始めた。
でも、その中に奈津江ちゃんは入っていなかった。
きっと、お母さんはそのつもりだったのかもしれないのに。

奈津江ちゃんは、中学はワタシと一緒の
地元の中学には進まなかった。
優秀な高校に入りやすいように
県庁の側の中学校に入学した。
多分、そのために家も引っ越したと思う。

その後、奈津江ちゃんが
どこの高校に行ったか良く知らないけれど
それなりの所を、それなりに卒業したのではないだろうか?

ライン

数十年前、社会人になった奈津江ちゃんと偶然会った。   
その時、奈津江ちゃんは思いの外
懐かしそうに駆け寄ってきた。
言葉使いも丁寧で、
こどもの頃感じた嫌みな性格は微塵もなかった。
ワタシの方がシドロ・モドロになった。
その時、初めて解った。
奈津江ちゃんはやっと、
お母さんの呪縛から逃れたのだと。
笑顔で別れた、奈津江ちゃんの後ろ姿がとても優しかった。


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