タイトル

ムーン・ストーリー(Nov)

もうすぐ次の満月です。
ミーシャは今度はどんな夢(?)を見るのか楽しみになりました。
お外に出られないことは残念なことだけれど・・・
最近のミーシャはとっても良いことばかり。
もう、苦しくて起きあがれないと言うこともないし
お父さん・お母さんがお仕事の合間に遊んでもくれます。
ホラッ♪ 今日だってね、
「りゅう、かけっこしようか!」って、お母さんが。
僕の方がズーッと速いのに・・・

「りゅう、もう寝ようね・・・」
お母さんの声が聞こえます。
「ミュー・・・」
もうちょっと待ってね、って言ったつもりでした。
お父さんとお母さんのスゥ、スゥ・・寝息が聞こえてきます。

ミーシャはお月様に向かって『こんばんは』・・・
「ミュー・・・」と一声鳴きました。
お月様がニコッと笑って
夜空にたくさんのお星様をちりばめました。

ライン

〈ころ〉

ミーシャに見えてきたのは・・・
なんだか慌ただしい、お引っ越しのようです。
小さなニット工場の敷地に○○お引っ越しセンターと
書かれたトラックが止まっています。
お父さんと、お母さんと変わらないような小父さんと小母さん。
ご近所にご挨拶もなしに急いで荷物を運んでいます。
そして・・・お昼過ぎには出て行ってしまいました。

実は、ここは一年前倒産してしまったのです。
債権は、裁判所公示となって不動産もみんな無くなりました。
いよいよ、明け渡しになったのです・・・

ところが・・・お引っ越しのトラックが出てしまった後
たったひとつ残されている物がありました。
それは、白い犬の《ころ》でした。

《ころ》には何がなんだか少しも解りません。
小父さんが出て行く前に《ころ》の餌入れに
いっぱいのドッグフードとお水を入れていきました。
でも・・・それから何日たっても
小父さんと小母さんは戻ってきません。

見かねた近くの何軒かのお宅が
《ころ》に餌を運ぶようになりました。
今までは『ウゥ〜ッ!』と威嚇していた《ころ》ですが
最近ではしっぽをちぎれんばかりに振ります。
そのお宅の犬のご飯時は
「ワンワン」と声が聞こえてくるので解ります。
《ころ》も一緒に叫びます。「ご飯だよ。」

そして、とうとう新しい人に落札されました。
ご近所のみんなが心配した《ころ》
もしかしたら・・・保健所?
口にこそ出しませんでしたが。

その日・・・工場の改修工事が始まりました。
《ころ》の餌を運んでいたお宅の小父さんが
新しい住人に聞きました。
「あの・・・犬はどうなるのですか?」
「あぁ、置いてやりますよ、家にも4匹いるのでね。」
それを聞いた小父さんはホッとしました。

飼ってもらえるようにはなったけれど
《ころ》には会ったこともない犬がやってきます。
《ころ》にとっては飼い主も変わって・・・
恐らくは後からやってくる犬の方が
新しいご主人には大切なのです。

《ころ》にとっての大切なご主人は・・・
子供のころから育ててくれた
あのニット工場のご主人なのです。
・・・でも、置いて行かれた《ころ》には
どうすることも出来ません。

ライン

アッ!流れ星・・・
そう思ったとき、《ころ》は消えました。
ミーシャは《ころ》がとっても気の毒でした。
ミーシャなら・・・耐えられない、 そう思いました。
でも、きっと
置いていったニット工場の小父さんも辛かったでしょう。
ミーシャはこれからの《ころ》の幸せを
心から祈りました。
『幸せになると良いね、ころちゃん♪』


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