タイトル

小さな幸せ

病院から帰ったミーシャは家の中が
すっかり変わっているのに気付きました。
なんだか明るいのです。
今まで閉じられていたカーテンが開かれ
暖かい陽射しが穏やかにミーシャを包みます。
「りゅう、ここがおまえのベッドだよ。」
お母さんが優しく言いました。

そこは小さな小窓があって
新しいとても温かそうなベッドがありました。
「さぁ、入ってごらん?!」
お母さんの声に誘われて
ミーシャはそっと入りました。
「おとうさん、りゅうが早速入ったわ♪」
お母さんの嬉しそうな声。

ミーシャは、お父さんとお母さんの頬が
ほんのりピンク色になってきたのが解りました。
何も見てないような遠い目が
今はしっかりミーシャを見つめています。
「神様の特効薬・・・」
ミーシャはそっとつぶやきました。

それでも、お母さんは
その青年のことを忘れたのではありません。
日に何度かはお仏壇の前に座ります。
でも、それは以前のようにただ、
涙が頬を伝うだけではありませんでした。
何かを語りかけているようですが・・・
ミーシャには良く解りませんでした。

ミーシャもお母さんの横に座ります。
「りゅう、これがお兄さんよ。」   
お母さんはミーシャをそっと抱き上げると
お仏壇の中の小さな写真を指さしました。
そこには一人の若者のくったくない笑顔がありました。
「ミュー・・・」
「お兄さん?」と尋ねたつもりですが、
ミーシャの声は「ミュー・・・」でした。

  ライン

小さなミーシャは少しずつ体力をつけていきました。
何度も熱を出したり、下痢をしたり・・・
その度に、お父さんとお母さんは
心配そうな顔をして30分の道程を動物病院へ急ぎます。
「お父さん、お母さんがいなかったら《りゅう》は死んでいたね。」
先生がそっとミーシャにつぶやきました。
ミーシャは幸せそうな声でうなずきました。
「ミュー・・・」

ある朝、お姉さんが来ました。
「りゅう、こんにちは。 あなたはとてもお利口ね。   
だって・・・わたしに出来なかったことをしたんですもの。」
そう言ってお姉さんは嬉しそうに   
お父さんとお母さんを見つめました。

真っ白な仕事着が雪解けの
春の陽射しを浴びてキラッと光りました。


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