タイトル

家族

ミーシャはこのお家では《りゅう》と呼ばれるようになりましたが・・・
相変わらす、老夫婦は暗い顔をしています。
老夫人は仕事の手が空くと部屋の奥
お仏壇の側に座り込んで動こうとはしません。
ミーシャが近寄ってそっと見上げると
涙がいっぱい溢れています。
ミーシャはこの老夫人がとっても可哀想に思えました。
何とか慰めたいと思っても
ミーシャにはどうして良いか解りませんでした。

ある日・・・
ミーシャは自分の具合が悪いことに気が付きました。
ご飯も欲しくないし・・・
体が熱っぽいのです。
何となく、息も荒くなってきました。

動かなくなったミーシャ・・・
それまで、まともにミーシャを見なかった老夫人が
初めてミーシャの顔をのぞき込みました。
「りゅう・・・大丈夫??」
でも、そのとき、ミーシャはもう頭を上げることも出来ませんでした。
何かが急に、ミーシャを襲ってきたのです。

「りゅう!!」
老夫人が叫びました。
「お父さん、りゅうがおかしいよ!!」
それからすぐにふたりはミーシャを連れて   
片道30分、街の動物病院へ行きました。
小さなミーシャは車に揺られるのも辛かったのです。

病院の先生は小さなミーシャに驚きました。
やせっぽっちのミーシャはもしかしたら助からない・・・
先生はそう思ったのです。
「体力がありません・・・
とりあえず、入院させましょう。」
そのとき初めて老夫人は気付いたのです
大切な宝物に・・・

「せんせい、りゅうを助けて下さい!
もう・・・もう大切な物を失うのは嫌です!」
そう言って老夫人は一生懸命お願いをしました。
聞こえないはずのミーシャの耳に老夫人の声が聞こえます。   
ミーシャの消えそうな意識の中にはっきりと響きます。
「僕は本当の家族になった・・・」 ライン

がらんと寝静まった病院のゲージ棚
隣にも怪我をした猫が寝ています。
ハァハァと短い息をしながらミーシャも真横になって寝ています。
小さな豆球がボゥと薄暗く照らしている部屋。
そのときスーッと風がミーシャの頬をなでました。
「ミーシャ・・・」
何かが聞こえます。
『ミーシャ・・・』
ミーシャは重たい瞼をあげました。

「わしじゃよ、ミーシャ」
それは神様でした・・・
「僕を連れに来たの?」   
一瞬ミーシャはそう思いました。
それならそれで・・・仕方ないと。

でも、神様は優しく微笑んでこうおっしゃいました。
「ミーシャや、ほんの少し辛抱しておくれ
今回のおまえの病気はあの老夫婦の特効薬でな。
ちょぃと、おまえには無理をさせたが
これで大丈夫、おまえという特効薬が良く効いておる。
ウォホッホ♪」

「そうなんだ・・・僕が特効薬に・・・」
フゥ〜ッと気が抜けたようになったミーシャは
ストンと眠りに落ちました。
「ほんの少し音が聞こえるようになるじゃろ。」
そんな神様の声が後ろから聞こえたような気が・・・

ライン

ミーシャは病院の先生のお陰でやっと回復しました。
点滴を何度かしているうちにミーシャ自身にも
元気が戻ってきているのが解ります。
検査の結果、大きく破れていた鼓膜の穴が
少しだけ小さくなってきました。
ほんの少し・・・
ほんの少し、音が聞こえます。

今日は退院です。
老夫婦がそろって迎えに来ました。
「りゅう、良かったね。本当に・・・」
老夫人は優しくミーシャを包み込みました。
「ごめんね、りゅう。
これからは私たちが、お父さんとお母さんだよ。」
ミーシャは小さな声で
「ミュー」と鳴きました。
「お父さん、りゅうの声が・・・」
お母さんの嬉しそうな声が病院に響きました。


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