タイトル

神様の忘れ物

ミーシャは北国の小さな街に住むアメショーの猫です。
生まれつきいろいろな病気を背負ったミーシャは
本当は生きていくことが難しい猫でした。
アメショーのペットブームによる
ブリーダーの増殖の為、
本来淘汰されるべき命が生まれてきたのです。
ミーシャは見た目は普通のアメショーです。
でもその体には、猫とはいえ
背負いきれないほどの病気を抱えていました。
まず、耳が聞こえないこと・・・
野生ならとうてい生きてはいけません。
その上、人で言う白血病まで。

ペットショップのゲージの中で
小さくうずくまって寝ていたミーシャー。
『ミーシャーや、ミーシャー・・・』
小さなそう呼ぶ声に目を覚ましました。
そこに神様が立っていました。

『ミーシャ、済まなかったのぉ
わしはちょっと忙しすぎての、   
おまえを少しばかり調整してこの世に
送り出してやるはずだったのに
うっかり忘れておったのじゃ。

じゃがな、おまえの命が
いつまでか、わしにも解らん。
おまえが巡り会った人たちと
どのように接するかで決まるのじゃ。
解ったかな?

わしは、ある青年を早くこちらに呼びすぎたんじゃ。
これこれ、そんな目でわしを見るでない。   
わしは忙しすぎて、ちょっと順番を間違ごうてしもた。
時間は戻せんでな
何しろ神様は一人じゃ、どうも忙しすぎていかん。
どうもならん・・・

おまえがちゃんと約束してくれたら
1年後のおまえの誕生日に
素晴らしいプレゼントをやろう・・・』

ライン

神様の声が、フゥ〜と消えたそのとき
ゲージの外で、沈んだ瞳のお姉さんが立っていました。
「あなた・・・お母さんを慰めてくれる?」
音の聞こえないミーシャは本当は
何を言ったか解らなかったけれど
スクッと立ってのびをしました。
「この子頂いていくわ」
神様が自慢のあごひげを
ゆっくりなでながらミーシャに頷きました。

そして、ミーシャは小さな散髪屋さんの
初老の夫婦の元にやって来ました。   
ふたりの瞳はお姉さんのそれより
さらに深く、暗く、
たとえようのない闇のように沈んでいました。
「猫なんって・・・」
老夫人は言いました。・・・
お姉さんの腕の中から飛び降りたミーシャは
なぜかこの老夫人が好きになりました。
ミーシャの声にならない声。
スッとすり寄ったミーシャの背中を
老夫人は優しくなでました。

「お母さん、お兄さんはもう帰ってこないの・・・
でも・・しっかり生きて行かなきゃ。
この子はきっと、お母さんの生き甲斐になるわ」

ミーシャは気付きました。
神様が間違って早めに呼び寄せた青年・・・
そう、ここがその青年の両親の家だったのです。
突然、希望を奪われた 老夫婦は
すっかり、生きる気力を失っていました。

やがて・・・
ミーシャはここで《りゅう》と名付けられました。


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