タイトル

ムーン・ストーリー(Jul)

お兄さんが買ってくれたパソコンはもう動きません。
お母さんは新しいノートパソコンを買いました。
でも、お母さんは・・・
お兄さんの古いパソコンは
いつまでも置いておこうと思っています。
たとえ起動しなくても
そこにはお兄さんの思い出がいっぱい詰まっています。

仕事で外に出られないお母さんは
インターネットで沢山のお友達と出会いました。
インターネットを教えてくれたのは、お兄さんでした。
お兄さんは仕事の合間をぬって
お母さんにキーボードの打ち方を教えてくれました。

お兄さんがいなくなってから
本当は、もうパソコンを使うことを辞めていたのです。
でも・・・ある日、お姉さんが
「おかあさん、《りゅうのページ》でも作ったら?
私も手伝うから」

そう言って、お姉さんはお母さんを励ましました。
せっかくお兄さんが教えてくれたパソコン。
お姉さんは、お兄さんのためにも
お母さんに続けて欲しかったのです。

そして、とうとう《りゅうのページ》が出来ました。
そこには【りゅう】のことばかり書いてあります。
でも、ミーシャは知っていました。
お母さんが【りゅう】のことを書きながら
本当は【りゅう】をとおして
お兄さんを見つめているのです。

それでも、ミーシャは幸せでした。
会ったこともないお兄さんですが・・・
ミーシャもお兄さんが大好きでした。
いつか、どこかで会ったことがあるような
そんな気さえしてきました。 ライン

今夜は満月です。
天ノ川が天空一面
ほのかに一筋の輝きを放っています。
お月様が、フゥ〜ッと息を吹きかけると
天ノ川から小さな星くずが地上に舞い降りていきます。

〈天ノ川〉

ここはどこでしょう?!・・・
もしかしたら・・・天ノ川?
キラキラ輝く星くずのなかにミーシャはいます。
もやのような空間の
そのズーッと奥に、紺碧の泉が見えます。
穏やかな水面は
なんの不安も、恐れも感じません。

何かはっきり見えませんが・・・
泉の中に何かがソーッと入っていきます。
静かに、静かに・・・   
まるで時間が止まったように
周りの景色はピクリともしません。
でも・・・
泉は穏やかな水面です。

やがて、一時もすると・・・
それは見事なあぶくが天上に昇っていきます。
ひとつ、ふたつ・・・
ミーシャは声もなく見とれています。

そのとき、
そう・・・あぶくのひとつを見たとき
ミーシャの心は“キュン”と、とても懐かしさを覚えました。
一瞬でしたが・・・
それは《さち》の幻を見たような気がしたのです。
そして、なぜ“キュン”としたのか
そのときのミーシャには解りませんでした。

お月様が
『ミーシャ、もう時間ですよ。
天ノ川が渡れなくなりますよ・・・』
そっと声をかけました。


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