タイトル

ムーン・ストーリー(Jun)

今日は・・・
お父さんとお友達が、冬の間
雪の重みで壊れてしまった、ビニールハウスの
修理をしています。
お母さんは、このハウスが
もう使えないのではないかと思っていました。

でも、夕方までにハウスは元通りになりました。
お母さんはとても嬉しくて
手伝って下さった、お父さんのお友達に
なんとお礼を言って良いか解りませんでした。

そう大きくないこのハウスは
仕事以外の
お母さんの大切な場所のようです。
ミーシャは、ハウスには連れて行ってもらえませんが・・・
お母さんが泥だらけになって
額に小さな汗をにじませて
帰ってくるのを見るのが大好きです。

今日もお母さんはミーシャに聞きました。
「りゅう、なんの種を蒔こうかしらね?!」
「ミュー・・・」
ミーシャは首をかしげました。

「本当はね、育てたい花があるのだけれど・・・」
お母さんは、そっと遠くを見つめて言いました。
『わすれな草・・・』
でも、そのお花はこの北の大地に
芽生えるかどうか解りません。

でも今年、お母さんは種を蒔くことにしました。
《そう・・・たとえ育たなくても毎年種を蒔こう。》
お母さんはそう決心したようです。

ミーシャには【わすれな草】という花が
どんなお花か知りません。
それは・・・お母さんにとって
お兄さんとだぶる生命のお花のようです。

ライン

さぁ、今夜も満月です。
6月・・・北の大地では日本で唯一、梅雨がありません。
やっと遅い春がやってきて
木々が緑の歓喜をあげています。

ミーシャは小窓でそっとわすれな草のことを思いました。
そして・・・
いつかほのかな甘い香りに包まれて眠ってしまいました。

〈わすれな草〉

チ・チ・チッ・・・小鳥の声で
ミーシャは目を覚ましました。

そこは・・・辺り一面
わすれな草のお花畑です。
淡いブルーの小さなお花が咲き乱れています。
見たこともないチョウチョや
小鳥たちも楽しそうに飛んでいます。

そのズーッと向こうに
ひとりの青年と真っ白な猫がいます。
ふたりはとても幸せそうにかけっこしたり
お花畑に寝ころんだりしています。   
青年がその猫に向かってなにか言っています。

「さち、とっても気持ちが良いね♪」

あっ!と気付いたとき
ミーシャは小窓にいました。
《そうなんだ
お兄さんは、きっと天国でさちと
いっぱい、いっぱい幸せなんだ》

お母さんに知らせてあげたくなりました。
「ミュー・・・」
でも・・・
お母さんは、かすかな寝息を立てています・・・


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