タイトル

ムーン・ストーリー(Apr)

4月・・・桜前線が北上していますが
ミーシャの住むこの街には桜はまだまだ先です。
それでも、時折り風が春の香りを運んでくれます。
こんな北の大地でも草木がほんの少し芽生えてきます。
もうすぐ・・・春です。

そう言えば・・・
暖かい地方ではツバメが帰ってきているらしいです。
ミーシャはツバメは見たことがありません。
短い夏、ツバメは北国には住めないのです。
南の国から幸せを運ぶというツバメ。
ミーシャはとっても会いたくなりました。

ライン

今度の満月は・・・
ミーシャの心は南の島に飛んでいます。   
お月様は、ミーシャを月のブランコにのせました。
見えてきたのは・・・

〈ヨタ〉

ミーシャはお家の前に座っている女の人を見つけました。
夏の終わり、大空を見上げながら
何かそっとつぶやいています。
「ヨタ、きっと無事で南の島に帰るのよ。
そして来年、きっと帰ってきてね。待ってるよ。」
その上空をツバメ達の集団が小さくなっていきます。

4月の始め、一組のツバメ夫婦が車庫に巣作りを始めました。
でも・・・車庫は夜になるとシャッターを下ろすのです。
それも承知なのでしょうか?!
せっせと巣作り、そして抱卵。
約三週間で雛に孵ります。
親ツバメはしっかりと餌を運んで
無事5羽の幼鳥を巣立ちさせました。

そしてその巣の隣で二度目の巣作り・・・
巣作り・抱卵は順調でした。   
雛に孵ったとき・・・
この雛たちは夜は親ツバメの保護はありませんでした。
先に巣立ったお兄さんツバメの教育に忙しかったのでしょうか?
それでも3羽の雛は順調育って、もうすぐ巣立ちと言うとき・・・
台風がやってきました。
その夜、親ツバメも車庫に避難してきました。
久々の親子の一夜です。

でも、それが親子で最後の夜でした。
明くる日、いつもと同じ夜になるはずでした。
でも、寝ていた雛たちをアオダイショウが襲いました。
巣の真下に落ちた一羽だけが無傷で助かりました。

「ほんの少し見つけるのが遅かった・・・」
このうちの奥さんが悔やみました。
何が起こったか解らない幼いツバメ。
奥さんは一晩保護すると
翌朝、小さなかごにツバメを入れてつるしました。

朝、親鳥は驚いたように巣と小さなかごを言ったり来たり。
幼いツバメは事情を話せたでしょうか?
もしかしたら、子育て放棄?
そんなことも奥さんは考えました。
人がさわった巣や、雛は育てないと聞いたからです。

でも、ちゃんと親ツバメは見守りました。
先に巣立った兄弟達も全員帰ってきて
残った雛に早めの巣立ちを促します。
・・・でも、まだまだ自信がないのです。
飛びかけては落ちる雛。
奥さんはこの雛をいつしか《ヨタ》と呼ぶようになりました。

ところが・・・親鳥がいないうちに
とうとう飛んだのです、大空に・・・   
親鳥が帰ってきて捜しています。
ツバメの見分けが付くって言ったら笑われるけれど
奥さんには《ヨタ》が解ります。
だって・・・たった1羽になった《ヨタ》は
はぐれ鳥のようになっていたのです。
たった1羽電線にとまっていたり
車庫に戻ってきたり・・・

それでも親ツバメは見捨てることなく
根気よく《ヨタ》に付いていました。
そして夏の終わり大勢の仲間と南の島に帰りました。
奥さんは笑いながら言うのです。
「《ヨタ》は大きな船のマストに止まって帰るんじゃないかしら?」

明くる年の春・・・
1羽のツバメが 車庫に戻ってきました。
奥さんは「《ヨタ》が帰ってきた!」
そう言って喜びました。

本当に《ヨタ》かどうかは誰にも解りませんが・・・


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