タイトル

ムーン・ストーリー(Feb)

その日も雪が降っていました。
何日も続いた雪で道路もお家も、
すっかり雪に覆われてしまいました。
今日は・・・満月ですが
お空は、お月様どころかお星様も見えません。
真っ暗な暗闇から小さな粉雪が絶え間なく落ちてきます・・・

「こんな日は〈さち〉を思い出すわねぇ・・・」
お母さんがお休み前にカーテンを引きながらポツンと言いました。
お父さんも「そうだなぁ・・」と答えました。
〈さち〉って誰のことだろう?
ミーシャは少し気になりました。

「ミュー・・・」だぁれ?って聞いてみましたが
お母さん達は気付きませんでした。
見えないはずのお月様が・・・
コックリ頷きながらミーシャの夢の中に現れました。 ライン

〈さち〉

「さち〜・さち〜、ただいま〜♪」
頭からすっぽり雪をかぶった学生服のお兄さん。
学校から戻ってきたようです。
〈さち〉は雪のように白い、真っ白な猫です。
お兄さんがいつかの縁日の帰りに拾った猫。

あの日、大きな木の下にたったひとり捨てられていた子猫・・・
お兄さんは「何もいらないからこの猫を飼っても良い?」
そうお父さんとお母さんにお願いしました。
お父さん・お母さんも「優しくしておやり・・・」と答えました。
お兄さんは壊れ物を持つように大切に大切に抱きかかえながら
「名前は〈さち〉が良いよね、幸せがいっぱい来るように!」
そう言ってお父さんお母さんを見上げた瞳には
優しさがいっぱい溢れていました。

〈さち〉はお兄さん、お姉さんと大の仲良しになりました。
いつもお兄さんの側を離れません。   
学校から帰ってくるのが待ち遠しいのです。
今日もガラス越しに一生懸命
お兄さんが帰ってくるのを待っていました。
お兄さんも窓の向こうに〈さち〉が待っているのが解ります。
帰ってきたお兄さんが勉強机に向かうと
〈さち〉も一緒に勉強机の上に上がります。
「さち。教科書の上に座り込んだら、僕勉強できないよ〜」
困ったような顔のお兄さんが、笑いながら言いました。

そして・・・10年後
お兄さんが大学生になる少し前・・・
〈さち〉は命を閉じました。
今夜のように雪の降る夜・・・
お兄さんの懐で安らかに命の灯火を消しました。
お兄さんは冷たくなっていく〈さち〉をずっと抱きしめていました。
でも・・・〈さち〉の一生はお兄さん達に巡り会って
とても幸せな一生でした。


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