タイトル

嬉しい誤算

 

弓彦と薫子の人生の大きな誤算
驚いたけれど・・・
嬉しかった誤算。
厳しかったけれど・・・
やっぱり嬉しかった誤算
それは双子の誕生♪

   ライン

なにが嬉しいって・・・
命の誕生ほど愛おしく嬉しいものはない。
長男が生まれたときもそうだけれども
健康な子供を授かったとき途方もない幸福感を味わった。
子供は生まれてきたとき
こんなにも周りの人を幸せにするんだ。
無垢の赤ん坊はただすやすや眠るだけだけれど・・・
天使が舞い降りたように
その空間はボゥと小さな灯火が輝く。

長男が生まれてまもなく
薫子達は長いトンネルに入った・・・
いつ出口の光が見えるのか息を潜めていたような気がする。
それでも、何とか出られたとき・・・
やっと青空がまぶしいと思った。

そして長男の出生から二年後
薫子に再び命が宿った。
今の人には信じられないかもしれないけれど・・・
薫子はこのとき検診に行ったのは
妊娠が解ったとき
切迫流産になりかけたとき
早産になったときの3回しか行かなかった(^^;)

つまり、おなかの子供が双子だと知ったのは・・・
分娩台に乗ったとき初めてだった。
8ヶ月早産。
二度目のお産はおなかが大きくなると言っていたけれど
最初の子供は10ヶ月ちょうど予定日誕生。
それでもおなかの大きさは8ヶ月ぐらいしかなかった。
医師も遅れるかもと言っていた。
だから・・・今回は普通の人の状態で進んでいた
と、薫子は思っていた。

分娩台の薫子のおなかを何度も触りながら
助産婦が一言
「双子かもしれませんよ。」

「うっそ〜・・・」
薫子は信じていなかった。
今度は女の子が欲しいと言っていた弓彦。
名前は・・・花子だったかな(笑)
やがて第1子分娩、長男と違ってひ弱な声だった。
もう終わったと、半ばくつろぎ気味の薫子に追い打ちをかける。
「おかあさん、もう一人。頑張って!」
『エッ!!』

そして生まれた子供は   
泣かない・・・   
医師が何度か、顔かおしりをたたいている。
「ミャ〜・・」
泣いた・・・か細い声だけれど薫子の耳に届いた。
1680g たったこれだけしかなかった。
「一卵性双生児の男の子ですよ。
体重をうまい具合に分け合っていたから
大丈夫、助かりますよ♪」

そのとき赤ん坊の顔を見たかどうか・・・
薫子は覚えていない。
個人病院で出産した薫子、
子供はすぐ保育器のある総合病院に運ばれた。   
少し前なら、未熟児網膜症で盲目になりかねない。
それよりまず、この小さな赤ん坊は命の危険にさらされていた。
その運命を弓彦は薫子には告げず一人胸にしまった。

弓彦にとって長く辛い一週間。
ふたりの幼子は生まれた次の日にはもう命名されていた。
月末に生まれた二人。
健康保険に入らなくてはいけなかったのだ。
それに、出産費用もふたり分いる・・・
そんなこと、計算外だったものね。   
大人の親指ほどしかない小さな足に
点滴用チューブが挿入された。
成人した彼らの足にはその命の絆の跡が今も残る。

後に眼科医が24時間何度も
彼らのために尽くしてくれたことを知った。
未熟児と呼ばれた彼らは小学校低学年
いや、体は中学卒業まで平均には追いつかなかった。
事に体重は・・・
けれども他は大病もせず元気に育っていった。
ふたつ上の長男+双子
どちらかというと三つ子状態。
たくさんの人に助けられて天使達は若者となった。

ライン

それでもこの世の中で双子の母となれたこと
薫子は少し嬉しかった。
だって望んで誰でもなれるものじゃないし・・・
それも一卵性双生児。
神様が薫子にくれたご褒美?!
確かに、5歳ぐらいまではてんやわんやの子育てだったけれど
あのどたばたが今は懐かしい。
子供と共に起き、子供と共に寝る・・・
子育てのこのとき   
薫子自身も幼いあの日を疑似体験していたように思う。

  

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