タイトル

そして・・・

≪弓彦≫と薫子が初めてであった翌日
≪健吾≫は赴任地へと旅だった。
別れとはいつも小さな余韻を残す・・・
社内でもふといつもと違う空気が流れていた。
そこに一本の電話のベルが鳴った。
電話を取ったのは販促課長。
「**さん(薫子)、○○(健吾)からみたい?!」
「エ〜ッ」まだ当時は携帯はない。
車中の人となった≪健吾≫がなぜ・・・

電話の主は≪弓彦≫だった。
薫子は笑った・・・
確かに似ている。
最近では姿形も似ているし
双子じゃないけれど、声は初対面の人には惑わされそう。

電話の奥の≪弓彦≫はそんなこと知るよしもない。
「また会えるかな?」そう訪ねてきた。
「良いですよ」緊張気味に薫子は答えた。
「 電話番号聞くの忘れたから・・・今度からは(会社)かけないから」
そう気の毒そうに言った。
人の心の解る人だ・・・薫子は思った。
手短に用件と、電話番号を聞くと≪弓彦≫は電話を切った。
24時間勤務だから、人と同じ休みでないこと。
つまり、薫子と休日が一緒ではないと言うことだった。   
多くの恋人達( と呼ぶにはまだ早いが・・・)のように
共有時間を持てるわけではない。
まして、お互い住んでいるところは県南と県西。
ちょっと会おうという場所ではない。   
受話器を置いた薫子はス〜ッと一呼吸した。
「課長、○○さんのお兄さんでした。」
きっと内心では不思議がったかもしれないけれど・・・
それ以上は誰も何も尋ねなかった。

この販社は確かに温かい人のぬくもりがあった。
取り立てて、気まずい人もいなかったし
支配人を中心として穏やかな人の集まりだった。
もちろん仕事に関しては
それぞれ責任を問われはしただろうけれど。
例の販売課長でさえ、人の良い笑みを返してくれる。
薫子の恋は今、周りの人に後押しされて始まった・・・
いつか巡り会う誰か・・・
そう思い続けてきた誰かに≪弓彦≫はなるのだろうか?!


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