タイトル

運命

運命はどこで決まるか解らない。
まさか、この職場から
薫子は自分の人生が決まるとは夢にも思っていなかった。
もちろん独身男性社員も何人かはいた。
けれども・・・
ここには○○部員と言う
いわば【美】を競う女性社員が大勢いた。
思えばいつもふるい落とされてきたから・・・

かと言って・・・ここで社内恋愛という
素敵な出会いがあったわけではない(^^;)
そう、薫子自身いつも表面的な自分には引け目があった。
五体満足・・・これだけで充分じゃない。
容姿端麗・眉目秀麗、これは望んでも得られるものではない。
だからと言って、   
その製造元(?)を憎むなんって事は考えられない。
与えられた環境で精一杯の努力
そう自分自身に言い聞かせていた。

養父母に極端な不満が有った訳じゃない。
感謝こそすれ、憎んだり、嫌ったりすることは
ある意味で自分自身を否定することにもなる。
ただ・・・いつの頃からか
恐らく自分自身の出生の秘密をはっきり見つめた日
その日を境にいつかこの家を出たいと思っていた。
なぜ? 何度も自分に問いかけた。
解ってはもらえないかもしれないけれど・・・
【本当の家族】じゃなかったあの慟哭。
それでもどうにもすることが出来なかった自分。
誰かが、ここからいつか救い出してくれる
その誰かを心の中で待った。

トオルと決別してから数年の歳月が流れていた。
けれども、薫子の心の小箱の中には
いつもトオルがいた。
決して届かない心の会話を
薫子は一方的に送っていた。
想い出となるようなものは、もう何もなかったのに・・・

ライン

○○部員にたいして事務職の薫子達のことを内勤社員と呼んだ。
たまには独身男性社員達と
お茶を飲みに行ったり、遊びに行くこともある。
もちろん、密かな願望を持っているものだっている。
とりあえず、薫子はピクニックに出かけたり
各販社対抗のソフトボール試合など
同じ年代の若者達と健康的な交流が出来た。
また、仕事以外のサークルに入って楽しむことも覚えた。

そんなある日
例の総務課長とある独身社員の会話が耳に飛び込んだ。
「課長、**さん(薫子のこと)
兄貴の嫁さんにしたいんだけれど?」
「ホホウ〜、うん!良いいかもしれんな ♪」
「じゃあ、良いですかね?! アタックしても(笑)」
「かまわん・かまわん。ヾ(^▽^*おわはははっ!!」
「あら、なんのお話?」すました顔で薫子は笑った。
何年後かこの話が現実になるとは
このときの誰もが思わなかった。

独身社員を≪健吾≫という。
その後も何度か冗談半分に薫子に
「兄貴の嫁さんに♪」と言ってきた。
「あなたのお嫁さんじゃないのね?!」
「すまん。俺、もう決めてるから!」
それはまるで言葉のキャッチボールだった。

その≪健吾≫の結婚式に薫子達は招かれた。
その日初めて≪弓彦≫と対面したけれど・・・
≪弓彦≫にも薫子にも記憶に残らない一日だった。
がっちり型の≪健吾≫に対して
痩せ形の≪弓彦≫
誰かに似ている・・・
あぁ〜【平尾昌明】。。
ふと薫子は思った、彼なら恋人ぐらいはいるな。

そして・・・記憶の彼方へ消えかけたある日
結婚したばかりの≪健吾≫に県外転勤の辞令が出た。
総務課長のふるさとだった。
前年、彼はふるさとに帰っていた。   
≪健吾≫をかわいがっていた総務課長の親心の転勤。
明日はもう出発と言うその日
≪健吾≫から電話が鳴った。
「兄貴と一度だけ会ってくれ」
最後の≪健吾≫の願を断る理由はなかった。


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